水産業の将来に大きな危機感、仲卸大手として魚食拡大に工夫(前)
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(株)アキラ水産
アイランドシティにアンテナショップを開店
東区の人工島・アイランドシティに2016年2月、福岡市中央卸売市場の新しい青果市場「ベジフルスタジアム」がオープンした。野菜とフルーツが集まる競技場をイメージした施設内には定温卸売場や競り場、一般来場者のためのレストランやショップなどがある。その一角に「四季海鮮(海は毎部分が母、鮮は魚という字を3つ組み合わせた造語)」という鮮魚や加工品を扱う店が開店した。福岡市の長浜で水産物仲卸業を中心に営む(株)アキラ水産が手がけた、魚食普及のためのアンテナショップである。
同社が一般消費者向けの小売店を持つのは、福岡市中央卸売市場鮮魚市場に続き2店舗目だ。その理由を安部泰宏代表取締役社長に聞いた。「魚食の拡大が大きな目的です。とくに直売所が少ない福岡市東部に住む皆さんに、良い魚や加工品をお届けしたかったのです。我々仲卸業の取扱量は、1995年をピークに、以後、年々下がっています。私の感覚では、最盛期の4分の1程度まで落ち込んでいるんですね。理由は魚食離れが進んでいるからなのですが、我々としてはもっと魚を食べていただきたい。それには、良い魚を消費者に直接届けるのが第一なのです」
魚離れの要因としては、「肉に比べて高い」「魚を扱える人が少なくなった」「骨があるため食べるのが面倒」―などが挙げられる。なかでも、魚が高い背景には資源自体が少なくなっているうえに、世界的な日本食ブームの煽りを受け、これまであまり魚食をしなかった国が食べ始めたという事情がある。「世界的に、魚の取り合いが始まっています。それに肉と違って魚は、その年によって収量が予測できません。環境の変化で不漁の年が続いたりするため、魚価の高騰につながるわけです。だから魚の養殖が増えて、スーパーに並ぶのは養殖ものがほとんどという場合もあります。ただし技術の向上で、天然ものに負けないほどおいしくなりましたけれど」。
高い、面倒、食べない、だから売れない、また高くなる―完全に負のスパイラルに入っている水産業。安部社長によると問屋の数も減っており、福岡ではかつての6割しか残っていないという。また、魚屋も町なかで見かけることが少なくなり、スーパーの鮮魚部門も赤字のところが多いようだ。もちろん安部社長は、こういう状況をただ傍観してきたわけではない。同社は、大正中期の創業。博多の台所「柳橋連合市場」のルーツとなった「明市場」が出発点だ。安部社長の祖父・栄次郎氏と伯父の明氏、父の篤助氏が起業した。仲卸業を始めたのは1960年。これからはスーパーマーケットの時代が来ると安部社長が判断し、戦後、篤助氏が切り盛りしていた鮮魚店を量販店向けの業態に大きく変えた。
その読みが当たり、業績は右肩上がりでアップ。福岡水産業のリーディングカンパニーに発展した。一方で、業界全体の活性化に注力。魚食拡大にも努めてきた。その一例が、福岡市民の間で定着した市場開放イベント「市民感謝デー」だ。これは、福岡市鮮魚仲卸協同組合理事長も務める安部社長が旗振り役となって、毎月第2土曜日の午前9時から3時間、普段市場に入れない市民に開放。毎回6,000人もの人々が詰めかけ、開場を待ちわびる人が早朝6時頃から行列をつくる。
「うち1社だけではなく、水産業全体の再興につながればと思って始めましたが、これほど受け入れられるとは嬉しい限りです。需要はまだあるということですね」(安部社長)。(つづく)
<COMPANY INFORMATION>
代 表:安部 泰宏
所在地:福岡市中央区長浜3-11-3-711
設 立:1960年4月
資本金:2,000万円
TEL:092-711-6601
URL:http://www.akirasuisan.co.jp<プロフィール>
安部 泰宏
1939年3月福岡市生まれ。福岡大学附属大濠高校卒業。(株)アキラ水産代表取締役社長を務める一方、全国水産物卸組合連合会副会長や九州地区水産物卸組合連合会会長、福岡市鮮魚仲卸協同組合理事長として魚食拡大をめざし多忙な毎日を送る。福岡商工会議所副会頭。11年に旭日双光章受章。法人名
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