元民主系福岡県議に聞く、民主県政県議団が県議会正常化の先頭に立てない理由

 福岡県や県議会の高額な海外視察などの公金支出や、正副議長就任時の自民県議団幹部に対する金銭授受疑惑が大きな問題となっているなか、金銭授受疑惑を告発した吉松源昭県議が蔵内勇夫議長に対する辞職勧告決議案を臨時会に提出することがわかった。長年、自民や民主などによるオール与党体制の影響もあり、決議案への賛否や辞職した中尾正幸副議長に代わる副議長選の行方も混とんとしている。民主会派がなぜ、県議会正常化の先頭に立てないのか。民主会派に所属した元県議に話を聞いた。

民主会派結成から現在に至る経緯

 福岡県議会の海外視察や金銭授受疑惑、蔵内議長肝いりのワンヘルス事業など、福岡県政と県議会の不明朗な関係の淵源が、1980年代の昭和末期まで遡ることは以前紹介した。ここで民主会派の歴史を述べておきたい。

 自民などの元県議や労働組合の関係者などによると、83年の知事選で当選した社会党・共産党推薦の奥田八二知事と、県議会で多数派であった自民党との対立のなかで、与党会派であった社会党と自民との間で、水面下の協議が行われ、予算や人事など自民側の要求を奥田知事側が受け入れることで折り合いがついたという。福岡は、北海道や京都と並び、労働運動が盛んで、日教組や自治労の活動が活発だったが、過激な運動では県民の支持を得られないと、労組が支持する社会党も方向転換を模索していた。

 蔵内勇夫議長の県議初当選は、87年の県議選である。韓国の民主化など東西冷戦の終盤でもあり、保守・革新の対立を超え、協調によって県政を前進させようとする動きが芽生えた時期だ。95年に元通産官僚の麻生渡氏が知事に就任したが、共産党を除く自民から社会党まで主要政党が推薦を行った。

 その後、民主党の結成により、福岡でも多くの社会党議員が、民主党に合流した。現在の福岡県議会の第2会派・民主県政クラブの前身は、99年に発足した社会党や旧民社党系からなる福岡県政クラブである。なお、地域事情から、農政連系の緑友会には旧民社党系の県議が数人在籍していた。それまでは、社民党(社会党)・県友クラブと民社系会派は別々に活動していた。

 県政クラブは、99年初当選の吉村敏男氏をはじめ助信良平氏、新村雅彦氏ら社会党系と、豊沢一男氏、冨田徳二氏ら民社党系により構成されていたが、社会党系の発言力が強かった。その流れは立憲民主党・国民民主党・社民党・無所属による現在の民主県政県議団に受け継がれている。

 自民党は福岡県議会において多数派だが、会派内に派閥もあり、分裂した時期もある。正副議長選をめぐり、第2会派の民主会派をどの勢力が取り込むかをめぐる駆け引きも行われた。2000年代前半から台頭した蔵内氏が、民主の助信・吉村両氏と水面下で話し合い、議会運営を進めてきた。問題の金銭授受はこうした動きを背景に行われたものとの指摘がある。

元民主県議の証言と県議会問題に対する見解

 福岡県議会における民主会派の歴史を踏まえたうえで、民主会派に所属したA元県議が、現在の民主会派や県議会をどう見ているのか紹介したい。A元県議は匿名を条件に取材に応じた。

 A元県議は、現役ではないので、「あくまで私見である」としたうえで、「会派がまとまらず、副議長の擁立にもたついているのはかつてなかったこと」と述べ、「まとめる人が会派内にいないのではないか」「副議長擁立に反対しているのは数人」と指摘した。

 蔵内氏に対する評価について「県議会をまとめてきた手腕は大きい」としながら、「議会のパワーバランスとして、国会議員では松本龍先生(元復興相・民主県連元代表)、県議会に助さん(助信良平氏)のように自民と渡り合える人がいなくなったことが問題ではないか」と述べ、「蔵内一強」ともいえる状態になった背景を語った。

 一連の問題の背景にあるオール与党体制についてAは「95年まで続いた革新県政のなかで、対立するだけでなく、県民のために協力しあう重要性を自民も現在の民主も学んだ」「地方自治は議院内閣制ではなく二元代表制で、議員は執行部には入らないので、政策を実現するには議会内の多数派をとる必要があり、自民党だけでなく、民主、公明、新政会やその前身の緑友会など、複数会派でまとまる必要があった」とプラス面を述べた。

 国会と地方議会では制度や議会運営の在り方が異なる。ただ、その違いを考慮しても、「みんな仲間」という意識のなかで緊張感が失われたことが、時代錯誤ともいえる慣習を温存する一因になったのではないか。

 17日の臨時会では、吉松源昭県議が蔵内勇夫議長に対する辞職勧告決議案を提出する予定だが、県議会内では対応をめぐって賛否が分かれている。

 そこでAが現役であればどのように考えるか問うた。

 Aの回答は「内輪の調査ではなく第三者委員会で結論を出すべきと今まで要求してきたわけだから、吉松さんの提案ではなくて、うち(民主)の会派から辞職勧告出すのであればありかもしれない」と、含みをもたせつつ、第三者委員会の調査を優先すべきとの考えを示した。

 県民の反発が強い高額な海外視察については「海外視察の中身を精査して、その有効性を検証して、必要性を含めて見直しが必要だ」と語った。

 最後にワンヘルス事業について「地球の環境変化などを考えるとワンヘルスは必要」としながら、「服部知事も見直しを言明していて、事業規模や内容は見直す必要がある」と述べた。

 Aは、県議在職中に福岡県議会の体制を支えた1人でもあるが、今回の取材では率直に語った。ぜひ民主県政県議団の皆さんには、原点に立ち返り、利害や支持団体ではなく「1人ひとりの県民のための県政実現」を目指していただきたい。

 17日は、臨時会開会(午前11時)に先立ち、午前9時半から副議長選挙における所信表明会が行われるほか、自民、民主、公明など各会派の総会も予定されている。副議長に誰が選出されるのか。また、蔵内勇夫議長に対する辞職勧告決議案の採決も行われる予定だ。同日午後から、県庁近くで立憲民主党の鬼木誠県連代表と、県職労OBの意見交換会も開催される。福岡県政の大転換の日となるか注目される。

【近藤将勝】

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