【あの会社は今】急成長の歪か？トラブル多発で窮地に立ったアスカ（後）

「業績は非公開」博報堂を相手に60億円訴訟

週刊実話 2016年6月30日号

　過去に数々の問題が起きたことは業績に大きく響いている。同社は決算書についてはもともと非公開だったが、売上高・利益については公開していた。しかし10年８月期を最後に非公開となり、業績に関する取材は拒否を続けていている。10年８月期以前の業績を見ると、ピーク時とみられる07年８月期の売上高が115億1,800万円、当期利益は１億円を境に減少。08年8月期は売上高112億6,900万円と微減だったが当期利益は5,000万円と50％減となり、10年8月期は売上高85億円と100億円を割り、当期利益は非公開。直近の15年８月期の業績について同社に聞くと、正確な数字についてはコメントを避けたが「売上高はピーク時の約半分」（同社）と回答。売上高は推定で約50億～60億円とみられる。

　そうした厳しい業況が続いている今年６月に、週刊誌やインターネットなど各メディアで、同社の主要取引先の大手広告代理店（株）博報堂が、15年10月にテレビCM料６億1,000万円の未払い金請求の裁判を東京地裁に起こし、同社は反訴するかたちで広告料金の水増し請求を受けたとして、博報堂を相手取り15億3,000万円の不当利得の返還請求を福岡地裁に起こしたことが大きく報道された。８月にはさらに47億8,631万円を加え、請求額は総額60億円以上となっている。

　経緯について同社に聞くと、「ここ数年の業績低迷で資金繰りが苦しくなり、テレビCMの停止や未払い分の広告費の支払いの調整について博報堂と話し合いをしていた昨年11月、不渡りも出していないのに事前申告もなく、銀行の差し押さえをしてきたことが発端。また請求内容について調べたら不審な点が明らかとなり、訴訟に踏み切った」という。同社は07年まで、広告代理店は博報堂のほか、（株）電通や（株）東急エージェンシーなど、複数の広告代理店と取引をしていたといい、同社の会報誌の広告スペースに博報堂が他社から有料広告を入れてきたことなどで関係性を深め、08年3月頃から独占的に取引先をするようになったという。

　しかし、博報堂側から、最大600万円だったと言われるテレビCMの企画料や却下したはずのプレゼンテーションの費用、本社がある福岡までの出張経費を「渡航費」として1回100万円以上の単位で請求があったといい、肝心のテレビCMについても「CMを流す時間帯で視聴率などの数値について、直近３カ月の平均値を出した実際のビデオリサーチの数値より水増しされ、８割以上虚偽の数字だった」といい、「CPO（Cost Per Order：1件のオーダーを取るのにいくら使ったかを見る指標）が最大150万円以上だった」と話した。博報堂との取引金額は10年間で約130億円に達していたといい、今回の訴訟が総額約60億円であることから、同社では約半分が水増し請求されていたと見ており、今後の裁判の動向が注目される。

問われる企業としての存在価値

10月より販売する化粧品「奇跡の泉」

　トラブル・不祥事続きの同社について業界はどのように見ているのだろうか。業界関係者筋に聞くと「現在は変わっているかもしれない」を前提に「以前は埼玉県にあった（株）コスメタリージャパンともう1社が主要受託先だった。10年前にコスメタリージャパンが倒産してから詳しくは知らないが、当時から非常に厳しい取引条件で知られている。処方の難しさや製造費の値引き交渉で揉めることも多いと聞く。そして発注が納期ギリギリのスケジュールなど、製造者泣かせという噂は広がっており、もはや業界の定説。依頼されても断っている受託業者は多いと思う」「当時は委託商品の在庫買い取りは処分を理由に買い叩かれることもあるなど、業者に厳しい条件を出すと聞いている。対応できるのは大手かよほど受注に苦しんでいる業者だけでは。何かあれば取引先に責任を押し付けがちな企業体質というのも付き合いづらい要因」などと、厳しい声が聞かれた。

　コンプライアンスの欠如や社内インフラの整備の遅れなどは、急成長の裏側として、通販業界ではよくあるケースだが、同社の場合、JAS法違反など、消費者へ不利益な情報を伝え商品を販売したことの責任は非常に大きい。業績に大きく響いている。業績回復の道のりは長いだろうが、今一度、企業としての体質改善が求められているのではないだろうか。

（了）
【小山　仁】

＜COMPANY INFORMATION＞
代　表：南部 昭行
所在地：福岡市博多区住吉1-2-25
設　立：1999年9月
資本金：1,000万円
売上高：（15/8）約50億円