2024年12月23日( 月 )

城ガールが巡る日本の名城~南海の名城・高知城(9・前)

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 高知駅に降り立つ。高知の空は、絵の具を溶かしたような青だった。

高知城とは

 高知城は天守と本丸御殿の両方が現存する全国唯一のお城である。関ケ原の合戦で功績を上げた山内一豊によって、慶長6(1601)年より築城を開始、慶長16(1611)年に完成した。享保12(1727)年の火災で、天守をはじめとする城内の主要建造物が焼失、大手門ほか数棟を残すのみとなる。現在の高知城天守は、寛延2(1749)年に再建されたものだ。
 元は大高坂山にあったことから大高坂山城、その後山内一豊の入城を機に河中山城(こうちやまじょう)と改名する。その後、幾度となく水害に見舞われたことを機に、慶長15(1610)年に“河中”の字を高智へと変え、名を高智山城と改めた。これが“高知”の名の始まりとされている。

300年以上続く、土佐の日曜市

 高知駅前の大通りを進んでいくと、高知城の大手門に続く大手筋と道が交わる。大手筋では“日曜市”が開かれていた。
 日曜市とは、元禄3(1690)年に土佐藩4代藩主・山内豊昌が定めた「市立」から始まったとされる生活市のこと。地元の人から観光客まで、多くの人で賑わう風景は、市場というよりまるでお祭りのようだ。特産品の新高梨(にいたかなし)や地元で捕れた干物、骨董品から鹿肉まで、様々なものが売られている。

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 人の波に流されるように歩いていると、気になるお店を見つけた。「とさでんの豆電車」と書かれた小さな木の看板の下には、小さな車両がずらりと並んでいる。実際に高知市内を走っている路面電車「とさでん」がそのまま小さくなった、まさに豆電車だ。

tosaden 車両には“いの”、“ごめん”と書かれていて、本来は“免町行き”の意味。けれど、“ごめん!”と謝っているように見える。お店のご婦人に「本当に“ごめん”て書いてあるんですか?」と尋ねると、実際の車両の写真を取り出し「本当よ!ほら、見てみて。ごめ~ん!って」と笑顔で返してくれた。
 一目で気に入った、レトロなデザインが可愛らしい『とさでん 600形』の豆電車を購入。別れ際、お店の方(ご夫妻?)に、「豆電車を落とすと大変だから」と大きな袋を貰い、「土佐弁が素敵だと褒めてくれたから」とおまけの電車写真を貰い、記念だからと“ごめん”が書かれたひし形の案内版を持った写真を撮影してもらった。
 他所から来た人も、分け隔てなく受け入れてくれる。そんな人の温かさが、長く愛され、続いてきた日曜市の魅力の1つなのかもしれない。

高知城への入り口

 大手筋を西に向かって歩いていると、木々に覆われた天守と、その手前に構える大手門が見えてきた。この大手門は寛文4(1664)年に建てられたもので、大きな石垣の上に建つ姿は、お城の守りを象徴しているかのように堂々としている。
 大手門を正面にして立つと、高知城の守りの一端が見える。大手門に連なるよう建てられている塀には、敵を攻撃するための狭間(さま)があり、正面、左、背面と、三方向から敵を撃てるのだ。もちろん、天守からもこの大手門の様子を確認することができる。想像していた以上に残されている“お城らしさ”を感じながら、重厚な門をくぐり、城内へと入った。

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城内を歩く

 城内に入ると、まず豊かな草木の緑に目を奪われた。太く高く伸びる杉の木は、まるでお城の歴史の長さを表しているようだ。天守へ続く階段の下に行くと、ボランティアガイドのおじさんがご夫妻を連れ城内の解説をしている場面に遭遇、勇気を出して声をかけると、ふたつ返事で一行に混ぜてもらえることになった。先にガイドを受けていたのは、名古屋から来られたというご夫婦。気さくな笑顔で「お嬢ちゃん」と声をかけられ、嬉し恥ずかしい気持ちになる。
 ガイドの冒頭、「お城というものは、色んな仕掛け、工夫があるんです。だから、ぱーっと上に登って貰っては困るんです。なので、一つひとつ、見ていきましょう」と話すおじさんの手には、見るからに重そうな分厚いファイル。そのファイルには、高知城に関する歴史、天守や石垣の造りや、瓦の意味まで、様々な情報が詰めこまれていた。

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(つづく)
【城野 円】

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