2024年12月24日( 火 )

プーチンを取るか、スーチーを取るか?注目すべき新生ミャンマーの国造り(2)

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国際政治経済学者 浜田 和幸 氏

 プーチンのロシアが関係強化に走っているのは中国に限らない。ベトナムへの食い込みは半端ないものがある。ロシアの自動車メーカーは、ベトナムで製造し統一市場がスタートしたアセアン諸国を皮切りにアメリカ本土にまで売り込み攻勢を仕掛ける準備に入っていた。TPPが成立すれば、ロシア製の自動車が交通事故を瞬時に避けるテレポーテーションの技術をアメリカに関税なしで輸出できるという目論見すらあった。

hoppouryoudo 当然、そうした思惑通りに行くはずはないだろうが、プーチンのロシアは一筋縄ではいかないことをしっかり肝に銘じておくべきだろう。プーチンが唱える、北方領土問題を巡る「引き分け」の中身は、日本が願っているような領土問題の解決ではなく、領土問題のテレポーテーション化に過ぎない。期待を煽って、経済協力や技術移転という実利をまず手に入れることに主眼が置かれていると思われる。その際の切り札は「日本が協力しなければ、中国と組みますよ」の一言だろう。

 そんななか、日本にとっては新たなビジネスパートナーとしてミャンマーに目を向ける時であると提案したい。「アジア最後のフロンティア」と呼ばれるミャンマーの現状と未来に世界の注目が集まっている。大半の日本人は東南アジアといえば、タイやベトナムどまりで、ミャンマーまでは関心のアンテナが行き届いていないようだ。実はミャンマーでは2011年から、当時のテン・セイン政権の下で政治と経済の改革がスタートした。それまでは強権的な軍事独裁政権が続いたため、世界から最も情報が遮断された国と見なされていたものである。

 小生は何度か同国を訪れたことがあるが、軍事政権の下でも多くの人々が日本に対して愛着と敬意を抱いていることを間近に体験することができた。しかし、長年にわたる軍事政権の支配の下、自由な言論、政治、経済活動は認められず、国民の日常生活はあらゆる面で厳しく制限されてきていた。その象徴がアウン・サン・スーチーさんの自宅軟禁に他ならない。1991年には民主化運動が評価されノーベル平和賞を受賞することになったが、その授賞式にも出席することは叶わなかったのである。

 国際社会の働きかけもあり、ミャンマーにとっては初の民主的な選挙が2015年にようやく実施され、スーチーさんの率いるNLD(国民民主連合)が政権の座に就くことになった。紆余曲折を経て、16年4月には、スーチーさんを実質的な国家の最高指導者とする体制が固まった。
 それ以来、国際通貨基金(IMF)の表現を借りれば、「世界で最も急激な経済成長を遂げる国」として、国際社会の注目と関心を集めている。IMFのデータによれば、16年ミャンマーは年間8.6%の経済成長を遂げており、これはブータン、インド、ラオス、カンボジア、バングラデッシュなどアジアのライバルを抑えて、正に世界ナンバー1の記録である。

(つづく)

<プロフィール>
hamada_prf浜田 和幸(はまだ・かずゆき)
国際未来科学研究所主宰。国際政治経済学者。東京外国語大学中国科卒。米ジョージ・ワシントン大学政治学博士。新日本製鉄、米戦略国際問題研究所、米議会調査局等を経て、現職。2010年7月、参議院議員選挙・鳥取選挙区で初当選を果たした。11年6月、自民党を離党し無所属で総務大臣政務官に就任し、震災復興に尽力。外務大臣政務官、東日本大震災復興対策本部員も務めた。
今年7月にネット出版した原田翔太氏との共著『未来予見〜「未来が見える人」は何をやっているのか?21世紀版知的未来学入門~』(ユナイテッドリンクスジャパン)がアマゾンでベストセラーに。

 
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