2024年12月24日( 火 )

人口減少社会を迎え、問われる宗教のかたち~社会のセーフティーネットへ転換を(前)

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無宗教の国、日本

 ビジネスの場で避けなければならない話題の最たるもの、宗教。こういったマナーは日本に限らず、海外でもスタンダードだ。しかし、マナーの背後にある社会状況や宗教的背景は日本と海外でかなり異なる。つまり、個々人がそれぞれ信仰を持つことが多い海外において、宗教の話題を避けるのは明確に「宗教の違いによる対立を避ける」という意味合いが大きい。場合によっては肉体的危害をともなうこともあり得るからこそ、宗教の話題には神経質にならざるを得ない。一方、日本人の考える宗教とは「何か面倒なことになりそうな話題」であり、うかつに踏み込むと揉めそうな「とりあえず避けておく」といった消極的忌避の対象だ。

 こうした宗教観は、日本人の大多数が無宗教だと自覚していることとも関係している。アメリカの大手調査機関ピューリサーチセンターの調査(2012年)によると、日本人の約57%が無宗教だという。無宗教者が多い国は、日本に加えて中国、北朝鮮、チェコ、エストニア、香港のわずか6カ国しかない。正月に神社に参拝し、お盆に祖先を迎え、恋人とクリスマスを祝う……という日本人の宗教的寛容さは、無宗教が多数派であることの証ともいえるのだ。特定宗教を基盤に成立している国が多いことを考えれば、このある種の「でたらめさ」は異様な光景だ。

 アメリカは、信仰の自由を求めたピューリタン(清教徒)が海を渡って建国した国であり、キリスト教の名のもとに先住民族を駆逐してフロンティアを開拓した。今年1月のドナルド・トランプ第45代大統領の誕生においても、国内の宗教バランスが大きく関係したとされている。進化論を教科書に載せることさえ「聖書に反する」と異議を唱えるキリスト教右派(原理主義)と白人貧困層(poor white)が引き起こした「反乱」。これは、日本と最も関係が深い国でさえキリスト教の影響下から逃れられない現実を示している。

日本的宗教の危機

 日本の宗教地図とはいかなるものか。国内の宗教法人が発表する信者数の約46%を占める神道と、約42%の仏教は土着的な色彩を持ち、たとえばお彼岸やお盆、神前結婚式や仏式葬儀などで日本人の生活様式に深く浸透している。

人口減少社会を迎え、問われる宗教のかたち

 しかし、こういった土着的宗教でさえ存続の危機に瀕していることが、各種調査や出版物などで明らかになっている。正確に言うならば、危機的状況にあるのは神道や仏教そのものではなく「宗教法人」であり、寺院や神社だ。これらを脅かす危機の正体とはすなわち、「人口減少社会の到来」である。

 日本は08年ごろ、すでに人口減少社会に転じている。国立社会保障・人口問題研究所による人口推計では、50年ごろに1億人を割り、60年には8,600万人まで減るとされている。政府機関などの文書でも「明治時代後半の1900年ごろから100年かけて増えてきた我が国の人口が、今後100年で同じ水準に戻る」「歴史を振り返っても例を見ない水準の人口減少を経験する」と危機感を露わにする。

 人口減少とともに、国力の低下という点でさらに深刻なのは、高齢化率の上昇だ。16年の「高齢社会白書」(内閣府)によると、総人口が減少するなかで高齢化率は上昇を続け、26.7%まで上昇している。予測では60年に2.5人に1人が65歳以上、4人に1人が75歳の著しい高齢社会が到来するとされる。

 一方、若者(14歳まで)の数は、1970年に約3,600万人、10年に約3,200万人だったものが、60年にはその半分以下の約1,500万人になると予測されている。全人口に占める若者人口の割合も、1970年の35.0%から10年には25%(約4人に1人)へと減少した。60年にいたっては、日本人の6人に1人(17.4%)しか若者がいないという異様な光景が広がるのだ。これはわずか40年後の日本社会の姿だ。

(つづく)
【小山田 浩介】

 

(後)

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