日東製網の子会社から出た漁網がみやこ町の私有地を占拠!
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無視されていた産廃処理のルール
今年5月、福岡県京都郡みやこ町で、私有地に10トン以上はある大量の漁網が放置されるという問題が発生した。7月6日に現地を取材したところ、地主の親族は、「知人のリサイクル業者から、白いロープを置かせて欲しいと相談を受けて許可をしたが、このような物が置かれるとは聞いていない」と困惑。また、同地には、漁網のほか、以前は存在しなかった廃ビニール材やドラム缶も放置され、地主や周辺住民から撤去を求める声があがっていた。
大量の漁網が放置された私有地は、山林に囲まれた閑静な住宅地に隣接する雑種地。網は袋に入っているものもあるが、大半は無造作に山積みにされ、さまざまな種類のものが複雑に絡みあっている。ビニールやプラスチックのくずも散乱しており、一見するとゴミ山。周辺には数軒の民家が建ち並んでおり、決してひと目につかないような場所ではないのだが、搬入は白昼堂々行われたという。近隣住民は、「5月26日の昼間から、2トントラックが1日に4台以上来るようになり、1週間ぐらいかけて運び込んだ」と話す。
近隣住民は、町役場や福岡県京築保健福祉環境事務所(京築保健所)に相談。しかし、京築保健所の担当者は、リサイクル業者に対して撤去を求めている一方で、「漁網は売却先が決まっていると聞いているので有価物」との見方を示す。一方で、ゴミ以外の何物でもないドラム缶や廃ビニール材については、リサイクル業者が関係を否定しており、同保健所担当者は、土地所有者に撤去する責任が生じる可能性を示唆した。
問題の漁網は、一部上場企業の子会社で漁網の製造販売を行う多久製網(株)(佐賀県多久市)が、リサイクル業者に販売用として売却したもの。当初、同社は、「有価物であるから廃棄物ではない」と主張。しかし後に、このリサイクル業者に対し、漁網の販売代金を上回る運送代を支払っていたことが発覚。いわゆる「逆有償」とみなされ、本来は、廃棄物処理法に従って処理しなければならないことが判明した。「逆有償」は産廃の排出事業者にとっては一般常識レベルのルール。漁網には、法で義務付けられた、産廃処理の流れを確認するマニフェストが添付されておらず、リサイクル業者自体も産廃処理業の許可を一切有していなかった。
問題を把握していない親会社
多久製網は、1966年7月に、漁網製造の最大手、現・東証一部上場の日東製網(株)(東京都港区)の完全子会社として設立された。現在も、日東製網の小林宏明社長が同社役員を兼任するなど密接な関係にあり、2010年5月に、日東製網が九州の拠点であった長崎支店を閉鎖した後は、親会社の九州支店機能を兼ね備えている。有明海近郊という利点を生かし、海苔網の製造販売を中心に手がけ、原材料の仕入れは日東製網から行い、製品のほとんどを日東製網に納める。東日本大震災後の復興特需で業績を伸ばしており、17年3月期は売上高12億7,650万円、最終利益1,573万円を計上し、増収増益をはたした。
上場企業子会社という信用力を背景に順調な業績推移を見せている同社だが、今回、みやこ町で発生した不祥事は、同社および日東製網グループのコンプライアンスに大きな疑問符がつく問題といえる。ところが、親会社の日東製網は詳細を把握しておらず、「法に基づいて適切に処理をしている」と繰り返し、「逆有償を知らないことは産廃を扱う会社としてありえない」と他人事のような回答だった。その事実から目を背けようとする姿勢には、自浄機能を失った組織の腐敗臭が感じられた。
現在、放置された漁網などについて同社は、許可を持つ産廃処理業者に依頼し、「責任をもって回収する」と話している。この問題については地元メディアも注目しており、事後処理の如何によっては、日東製網グループ全体の信用が失墜することになるだろう。
【山下 康太】
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