福岡地区生コン業界のこれから~業界動向と将来を見据えて
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今年の5月から新体制となった福岡地区生コンクリート協同組合(所在地:福岡市博多区、中島辰也理事長)。新たなリーダーに中島辰也氏(中島辰三郎商店ほか代表取締役)が就任し、5カ月ほどが経過している。中島氏がリーダーに選ばれたのは、「有力なアウトサイダーの代表と対等に交渉できる能力と胆力があるから」と同協同組合の複数の関係者の証言がある通り、福岡地区の生コン市場を安定化させるためが一番である。
その後について各々の関係者に対して取材を行ったところ、「現状のところ、これまでと変わりない」という状況である。変わりがないというのは、有力なアウトサイダーが「同協同組合に加入するか否か」を吟味中ということだ。
過去に再三、有力アウトサイダーが協同組合に「入る、入らない」とする情報が業界内で流れながらも、アウトサイダー各社と協同組合が一体となることはなかった。なぜなら、アウトサイダー各社は、協同組合に加入せずとも、強い営業力と技術開発力、そして盤石な財務力で、相互扶助は必要ないからだ。「一企業だから、自前で営業して業績を上げることは当然。だからといって協同組合の行く手を阻むつもりではない」というのが、アウトサイダー各社の経営スタンスである。よってほとんどが、「協同組合が価格の値上げをすれば、その価格を尊重しながら営業を展開する。法外なことはしない」とする姿勢だ。なかには、想定外の行動に出るアウトサイダーも存在するが……。では、今後同協同組合がどのように変化していけば、福岡地区の生コン業界が進化すると考えられるのだろうか。
近年、同協同組合加盟企業の年間出荷量は、110〜130万㎥前後で推移している。ピークだった1990年台の50%ほどの出荷量のなか、現在34工場での製造が行われている。複数の工場を有していた製造会社が工場を整理するなど、集約化の動きはあるものの、「現況、1工場あたりの月間平均出荷量は約3,100m3前後。損益分岐点のレベルで、健全な経営のためには後10工場程度整理して集約化すべき」という関係者もいる。そして組合というスケールメリットをいかした、高品質の生コンの製品開発に取り組むことを提言する関係者がいる。しかし業界の大多数は、「生コンの製品資質はどの企業も変わらない。それは夢物語」という意見だ。要するに新たなことには着手せず、現状を維持することが最優先というわけだ。
だが、建築物や構造物の建築条件はどれも違っており、その条件に適した原材料が必要。特に季節で品質が異なってくる生コンの取り扱いには繊細さが必要になのも事実だ。将来的には「JIS規格に適合しさえすれば良い」という発想でなく、各々の施主のニーズに適した配合で生コンの提供を行うサービスを、積極的に展開する仕組みの構築が期待される。これを実現することができれば、組合のエリア内での存在感が増すのは間違いないだろう。コスト面での懸念はあることは確か。また「そんなことには、すでに取り組んでいる」という答えが返ってくるならば、その取り組みは伝わるべき相手に伝わっていないのだ。
また、廃棄生コンを超低炭素コンクリートにする技術が鹿島建設、三和石産、東海大学によって開発され、環境大臣賞を受賞している。このように、環境保全に貢献する取り組みを推し進めていくことも考えられる。
生コンを通した新たな事業チャネルを発掘・開発することで、共同組合はさらに地域社会に貢献することができるのではないか。【河原 清明】
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