中島淳一・ニューヨークを歩く(前)
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新たな活動の足掛かりは、明らかに得られた。ニューヨークでの絵画個展、1人演劇上演を見事に成功させた中島淳一氏。先日のレポートでは表現しきれなかった体験と思いを、改めてしたためてもらった。氏の活動が新しい領域に入る、そのきっかけが多くの人々の支えもあって形づくられていく、その足跡をご覧いただきたい。
10月30日、個展と1人演劇の公演のため渡米。JFK空港でニューヨーク日米ライオンズクラブの会長から出迎えを受ける。1時間でミッドタウンのウェリントンホテルに到着。チェックインするとすぐにセントラルパークを散策する。空気が澄んで気分爽快である。瀟洒なカフェテラスが目に入る。屋外の白い丸テーブルに腰を降ろし、ホットチョコレートとクッキーを注文する。気がつくと数羽の雀が足元で忙しく動き回っている。パン屑をもらうのに慣れているのだろう。たしかに日本では見かけない太った雀だ。
ハロウィンの仮装なのか、バットマンに扮した2人の警察官に遭遇する。警察官の帽子を拝借し、2人の間に入って写真を撮ってもらう。その後、セントラルパークのそこかしこを3時間程歩く。最後は疲れ気味のところを輪タクに遭遇、5$でいいと言われ、ホテルまで乗って帰る。夜は大阪から応援に駆けつけてくれたH氏に誘われ、蕎麦を食べにSOBA AZUMAに行く。驚いたことに入り口の壁に私の個展のポスターが貼ってある。ウエイトレスはアメリカ人だが、経営者は日本人だという。たしかに、だし巻きもざる蕎麦も神田で食べているような錯覚に陥った。餃子も絶品だ。つい日本酒に手が出る。11月1日、作品搬入。日本クラブはニューヨーク在住の日本人のための会員制社交クラブで、カーネギーホールのほぼ向かいの一等地にある。ニューヨーク在住の知人や日本から手伝いにきてくれた友人たちのお陰で、広いギャラリーの壁に短時間で42点を展示。
11月2日、オープニングレセプションの出席者85名。広い会場が満席になる。1人演劇4作品を15分に凝縮して披露する。日本語は英語に、英語は日本語に翻訳したコピーを配布して行った。パフォーマンスが終わると割れんばかりの拍手。やはり、ニューヨークは熱い。キプロスの大使や経営者、舞台俳優、ダンサー、ミュジシャン、画家などさまざまなアーティストたちとの談笑は瞬く間に過ぎてゆく。
翌3日、国連大使ご夫婦がお見えになる。さすがに品位が違う。柔らかい気の中にも凛としたオーラがあった。11月4日、日曜日。ニューヨークシティマラソンのため交通規制があると聞き、早めにタクシーでメトロポリタン美術館に向かう。動画の撮影の為である。ただし、館内は写真の撮影しか許されておらず、ゴッホの「向日葵」の前でのインタビューは断念せざるを得なかった。
しかし、1人演劇ゴッホの公演の前に「向日葵」を間近に観ることができたのは幸運だった。底知れぬ存在感にゴッホの魂の叫びをきく思いがした。11月7日、公演当日の午後。字幕スーパーと舞台の台詞のすり合わせをする。壁にくっきりと浮かび上がる自分で翻訳した英文を見ながら、不思議な感覚にとらわれる。上演時間が近づく。促されて衣装を纏い、メークに入る。ところが突然、窓を叩きつけるような横なぐりの大雨である。キャンセルが相次いでいるという知らせが入る。ニューヨークではまったくの無名の私である。どうなることやと思いきや、空席はほとんどなかった。感動した。
(つづく)
※1人演劇公演については、下記のレポートも併せてご覧ください。
→中島淳一ニューヨーク便り(前)~11月7日関連キーワード
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