「健康経営」を成長戦略に。地場印刷会社が挑む「働き方改革」への一手
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社員の健康に積極的に取り組む法人を顕彰する「健康経営優良法人認定制度」。初回となる「健康経営優良法人2017」では、大規模部門で235法人、中小規模部門で385法人が認定された。
福岡の中小部門認定法人は13法人。福岡・東京・大阪に展開し、169名の社員が在籍するアド印刷(株)もその1つだ。同社ではいち早く健康管理の重要さに気づき、経産省の「健康経営」なども導入、社内の活性化に注力してきた。
「働き方改革」の提唱など労働環境改善へのニーズが高まる昨今、いかに変化していくかは企業の命運を分けるといっても過言ではない。
常に業界の動向を見据え、成長し続けてきたアド印刷。「健康経営優良法人2017」認定に満足せず、強まる環境改革ニーズにむけて、着実に歩を進める。社員の健康が企業の力の源
福岡を代表する印刷会社であるアド印刷(株)(本社:福岡市博多区、田平保男代表)。「健康経営優良法人2017・中小規模法人部門」に認定されたが、そもそも認定を得るために健康への取り組みを強化したわけではない。
人材の定着率が高い同社は、会社の成長とともに社員も年齢を重ねてきた。より徹底した健康維持のため、定期健康診断および再検査通知の受診を100%になるように管理。また35歳以上の人間ドック受診を推奨するため、費用の3分の2を負担するなどの施策を実施していた。
健康への意識を高め、定着させるには会社の公的な取り組みとすることが効果的だ。そこで4年ほど前から経産省が推奨する「健康経営」を導入、今年5月には全国健康保険協会(協会けんぽ)の「健康宣言」にも参加した。
「企業と社員は一心同体。元気な企業であるためには、社員が健康でなければなりません。弊社では毎日昼の2時30分から全社員でラジオ体操するなど小さな健康活動も取り入れ、社内の活性化を図っています」と話す同社担当。健康状態は改善に向かい、「みんなで健康に注意している」という意識から、社内も以前より明るい雰囲気になったという。「健康経営優良法人」認定に臨む
「健康経営優良法人」の認定を目指したのは、「健康宣言」へ参加したことで、県から打診を受けたことがきっかけだった。
すでに2月に認定法人が発表されていたが、中小規模法人部門で追加認定が決定。申請は8月下旬までであったため、急きょ書面などの準備に入った。「最も苦労したのは、施策の証拠を集めることですね。認定を得るためではなく、社員のための取り組みでしたので、社内通知書のような書面しか残っておらず数値化しにくいといった問題もありました」と同社担当は話す。
認定法人となるには、認定基準に沿った評価項目をクリアする必要があるが、どの程度基準を満たせば良いかという指標は公開されていない。最低限必須な項目を満たしていても認定されない可能性もある。同社は時間的猶予がないなかでも、認定に至った理由の1つとして「必須条件よりも多くクリアできる項目を、以前から実施できていたからではないか」と話している。健康重視を求職者にアピール
「健康経営優良法人」であることは、社内の健康化だけでなく、人材採用に有効という側面も持つ。
どの業界でも人材が不足し、“採用氷河期”といわれる昨今、少しでも多くの人材を採用することは企業にとって死活問題だ。労働環境が良くない職場を“ブラック企業”と呼ぶことが定着するなか、求職者は「福利厚生が整っている」「残業が少ない」「社員の健康や教育を重視している」などの“ホワイトさ”を求める傾向が高まっている。
「健康経営優良法人」の「大規模法人部門」はとくに「ホワイト500」と呼ばれ、求職者の興味をひきやすい。同認定の存在はすでに学生などの求職者の間でも広まりつつあり、今後の採用戦略に効果を発揮するとみられる。こういった動向をいち早く掴み、導入するのも、企業の存続には欠かせない手腕だといえるだろう。
「健康な企業活動を進めるには、既存の社員の活性化だけでなく、やはり若い力が必要です。ある法人では、従来の応募数が50名程度だったのに対し、認定を得た今期は約6倍の応募者が集まったそうです。それだけ、注目度が高い認定だと考えられます」(同社担当)。
「健康経営優良法人」であることが1種のブランドと化し、就職活動の指標となっていく可能性も高い。健康企業でありつづけるために
「健康経営優良法人認定」は、一度認定を受ければその後は自動で更新されるというわけではない。認定企業であるためには、毎年経産省に申請し、認定を受けなければならない。たとえば、「健康経営優良法人2017」で認定されても、「健康経営優良法人2018」に認定されなければ、2018年3月31日で認定期間が終了となる。
同社の目標も、まずは「健康経営優良法人2018」に認定されることだ。2018年版は、認定基準の必須項目が追加されるなど、2017年版よりもハードルが上がる。「引き続き認定法人となるためには、新しい取り組みを実施し、定着させていく必要があります。これによって少しずつ健康への活動を増加させていくことは、弊社の未来のためにも有用だと考えています」(同社担当)。来年2018年に設立40周年を迎える同社。最新の印刷機器の導入やインターネットを用いた入稿システムの活用など、常に業界の先行きを見極めて成長してきた。今後は社員の健康というソフト面もさらに向上させ、“名実ともに元気な企業”として、福岡の印刷業界をけん引し続ける。
【中尾 眞幸】
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