裁判例に学ぶ労働時間管理(2)~休憩時間の共通認識
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前回は労働時間について、裁判所がどう認定するかについて説明しました。タイムカードの記載通りでないというなら、会社側にその証明が求められるということでした。では、休憩時間についてはどうでしょうか。
休憩時間は認めてもらえやすい?
休憩時間とは、一般に労働時間の途中に置かれた、労働者が権利として労働から離れることを保障された時間をいいます(1947年9月13日発基第17)。そのため、作業に従事していなくとも、その時間を自由に使えない手待ち時間のような場合は、休憩時間とはいえません。
裁判所の考え方では、休憩時間についても、労務を提供していなかったということを会社の側で証明する必要があるということになります。しかし、多くの裁判例では、就業規則や雇用契約書で定めているであろう1時間(程度)の休憩時間があったことについては、比較的認める傾向にあります。
労基法34条
たとえば、従業員が昼の休憩について、概ね45分しか取得できなかったと主張した事件では「就業規則上は正午から午後1時までの休憩時間が定められ、作業などの都合でずれ込んだ場合に適宜調整する者もいたことに鑑みると」(2013年12月10日大阪地裁判決)と述べ、1時間の休憩があったと認めています。
さらに、従業員が、他の従業員よりも業務量が多かったため、平日は休憩が取れず、休日勤務では30分から1時間と主張した事件では、「1年10カ月におよぶ請求期間を通じて、ほとんど休憩を取らずに1週間に100時間近い実労働(1週あたり60時間程度の時間外労働)に連続して従事するなどということはおよそ不可能であるし、被告における業務内容にかんがみれば、労基法上義務づけられている休憩時間すら取得できないほど業務が過密であったり、即時対応のための待機を強いられたりしていたとは認めがたい」と述べています。(12年12月27日東京地裁判決)。さらにこの裁判例では、「原告が、連続して長時間勤務に従事しているにもかかわらず、一定の労務提供が可能であったことにかんがみれば、明け方近くに退勤しているような日については、勤務中に休息および仮眠を取るための休憩時間を取得したものとみるのが自然である。」とも述べて、休憩時間を認定しています。
裁判所が上記のような判断をした理由は、やはり労基法が、休憩を付与することを使用者の義務として規定していることにあると推測できます。
それでも実態が重要
ほとんどの裁判では、就業規則が証拠として提出されます。
就業規則には、休憩時間に関する事項を定めておく必要がありますので、使用者としては、その記載の通りに休憩があったと主張することが一般的です。そのため、就業規則に規定していれば、裁判所は休憩時間を認めてくれそうだも思われますが、そうではありません。就業規則に規定があるとともに、実態がともなうことが必要だという判例もあります。
以上のことからすれば、休憩時間については、就業規則で規定し、それに従って休憩時間を付与していれば、タイムカードなど客観的な証拠による立証ができなくとも、休憩時間が付与されたことは、比較的認められやすいものと思われます。
(つづく)
<プロフィール>
中野 公義(なかの・きみよし)
なかのきみよし弁護士事務所
1977年4月生まれ。労働基準監督官、厚生労働省本省(労災補償、労使関係担当)勤務の経験から、労働事件に精通している。
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