伊都キャンパス移転完了に向け資産増~総資産は4,500億円超
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伊都キャンパスへの移転を完了を控える九州大学。箱崎キャンパス跡地の売却による収入が1,900億円を上回る可能性のある九大の財務状況について、引き続き確認していく。
前回は決算報告書から九州大学の収支について触れたが、今回は2016事業年度(16年4月1日~17年3月31日)の貸借対照表から読み取れる部分について確認していく。
前年度(15事業年度)と比べ、総資産は131億円増加し、4,502億7,800万円となった。資産増の主な要因としては、やはり九大にとって最大のテーマである伊都キャンパス移転である。
建設前の固定資産への支出として計上される「建設仮勘定」が、前年度の25億6,000万円から164億9,000万円へと140億円以上の増加。これは国際化拠点図書館や人文社会科学系・農学系の総合研究棟の新営工事にかかわるもの。国際化拠点図書館は17年9月に完成し、収蔵能力350万冊を誇る国内最大規模の図書館である(18年10月オープン予定)。人文社会科学系研究棟は18年2月、農学系研究棟は同じく18年1月に完成。これらの研究棟の整備が完了することで、秋に予定されている伊都キャンパスでの本格的な授業開始の準備が整うことになる。
「土地」も7億500万円増となっているが、これは伊都キャンパスの整備・造成が進んだことで保有している不動産の価値が上昇したことによるもの。上述のように農学系の本格移転を前に水田、畑、果樹園、桑畑などの演習用圃場が整備されている。これは自然豊かな伊都キャンパスの特徴を十二分に活かしたもの。また、272haという広大な敷地を持つ伊都キャンパス(箱崎キャンパスの約6倍、単独キャンパスとして日本で最大級の広さ)内の交通の利便性を確保するため、キャンパスウエストゾーンから南ゲートへの幹線道路が建設され、16年10月から利用されている。
負債の部では長期借入金が増加している。これは伊都キャンパスへの移転のための費用として、民間金融機関からの借入金が増えたことによるもの。当期、新たに民間金融機関から借り入れた長期借入金は102億8,000万円。返済期限は2024年3月末となっている。伊都キャンパス移転は巨額の費用が必要となるが、九大としては箱崎キャンパス跡地の売却益を含めた自己収入、借入金、国からの運営費交付金の3本建てでそろばんを弾く格好だ。長期借入金には民間金融機関以外にも大学改革支援・学位授与機構から借り入れたものもあるが、こちらは大学病院の診療施設や先端医療機器の整備に使用している。
自己資本比率は60.5%。国からの補助がある国立大学法人であるため通常の企業とは一概に比較はできないが、借入金が100億円増えてこの比率というところに九大の財務体質の健全さの一端が現れているといえるだろう。
【深水 央】
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