日本は海洋資源大国 カギはメタンハイドレート(2)
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国際政治経済学者 浜田 和幸
「資源小国」と見なされてきた日本にとっては夢のような発表である。政府が資金を提供し、「メタンハイドレート資源開発研究コンソーシアム(MH21)」が中心となり、2013年には和歌山県の沖合で世界初の海洋産出試験が行われた。残念ながら、その試掘ではサンドフィルターに大量の砂が流れ込み、船上の生産水タンクにも砂が混入したため、予定された試験を中断することになった。
そもそも海底に薄く広がるメタンハイドレートは、穴を掘れば噴出する天然ガスなどと比べれば採取が難しく、コストも高いといわれる資源である。そのため、南海トラフを始め、日本近海には大量に賦存すると推定されているものの、なかなか商業化が進まなかった。もちろん、掘り出す技術に関していえば、日本は世界の最先端を走ってきた。カナダの永久凍土での試掘に際しては、アメリカやドイツの企業が舌を巻く結果を出しているのだから。
しかし、海底からの採取には困難な課題がいまだに立ちふさがっている。たとえば、ハイドレートからガスを取り出す際に、海底が不安定化し、堆積物が大陸斜面を転がり落ちる可能性がある。その場合、海底地すべりが起き、津波を引き起こす恐れも指摘されている。南海トラフでの採掘は巨大断層地震を誘発する危険性も秘めている。さらには、海底や海域全体の環境破壊につながる事態も想定されるだろう。加えて、海底から採取したガスをいかにして安全に陸地まで移送するかという難題も未解決である。
そのため、こうした課題を克服すべく、日本政府は2002年から2017年までに1,000億円を超える研究開発費を投入。ようやく2017年5月、南海トラフでの採取に成功したのである。もちろん、本格的な実用化にはまだまだ険しい道のりが待っており、「早くとも2023年から2027年」が想定されるとのこと。官民一体となった技術開発や海底の環境保全への取り組みが進んでおり、日本が「海洋資源大国」へ名乗りを上げる日もそう遠くないことを期待したい。
いうまでもなく、このメタンハイドレートには世界が注目し、その資源開発には各国がしのぎを削っている。アメリカも日本との協力で開発レースに参戦していたのだが、シェールガスが国内で利用できるようになったため、メタンハイドレートへの関心は当面薄れた模様。
その一方で、インド政府からは日本へ共同開発の打診があった。というのも、インドは「2032年までにすべての自動車を電動化する」と宣言しており、石油に代わるクリーン・エネルギーの確保に血眼になっているからだ。2020年代には1,000万台を超える電気自動車がインド市場では売られる見通しである。これは2015年の10倍以上の規模。そうしたニーズを考えれば、場合によっては、日本、インド、アメリカが協力する可能性もありそうだ。
そのため、経済産業省では2018年に3カ国による共同産出試験を実施する計画を進めている。アラスカ州の陸上での産出試験とインドの東海岸沖での共同試験が具体化しつつある。日本が単独で試験を行おうとすれば1日あたり数千万円の経費がかかる。インドやアメリカとの共同事業となれば、コスト低減が図れる。
(つづく)
<プロフィール>
浜田 和幸(はまだ・かずゆき)
国際未来科学研究所主宰。国際政治経済学者。東京外国語大学中国科卒。米ジョージ・ワシントン大学政治学博士。新日本製鉄、米戦略国際問題研究所、米議会調査局等を経て、現職。2010年7月、参議院議員選挙・鳥取選挙区で初当選を果たした。11年6月、自民党を離党し無所属で総務大臣政務官に就任し、震災復興に尽力。外務大臣政務官、東日本大震災復興対策本部員も務めた。
今年7月にネット出版した原田翔太氏との共著『未来予見〜「未来が見える人」は何をやっているのか?21世紀版知的未来学入門~』(ユナイテッドリンクスジャパン)がアマゾンでベストセラーに。関連キーワード
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