会計の見える化・自動化 イノベーションが導く新世代の企業経営(後)
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(株)マネーフォワード
オープンで公正な「お金のプラットフォーム」を構築すること、本質的なサービスを提供して個人や法人すべての人のお金の課題を解決することを目指し、2012年に設立された(株)マネーフォワード。17年9月、東証マザーズ上場をはたした。変わりゆくお金を取り巻く環境と、企業価値を高めるイノベーションの重要性について、辻庸介社長に聞いた。
(聞き手:データ・マックス執行役員 緒方克美)
「失われた20年」ではなく停滞し続け「失った20年」だ
――ここ20年で、時価総額でいうとアメリカのIT5社(Apple、Google、Amazon、Facebook、Microsoft)が突出してきたのに対し、日本ではトップ企業の顔ぶれも数字もあまり変わりません。一方で中国では新たな巨大企業が誕生しています。そうした中国勢の台頭についてはどのように思いますか。
辻 やはり伸びている会社は、新しい価値、新しいイノベーションを産んでいます。FacebookやGoogleは圧倒的な価値を創造しています。イノベーションを起こさなければユーザーはその価値にお金を使いませんから、当然収益は上がりません。そういう意味で、中国ではすさまじいイノベーションを起こしているからこそ、人々がお金を使い収益を上げている企業が多くあります。日本企業がイノベーションを起こし価値を向上させてこなかったからこそ、「失われた20年」といわれているのだと思います。失われた20年というより「失った20年」という方が正しいかもしれません。
中国は自国の人口が多い。それを自国の市場とできることが大きな強みであることは間違いありません。一方で日本は少子高齢化の時代を迎えています。GDPの6、7割は個人消費ですから、少子高齢化が進めば消費が減り、ひいては国力の低下につながります。そのためこれからも少子高齢化対策は進めていかなくてはなりません。人口の母数の多い中国をただ羨んでいても仕方ありませんので、日本としてどうするかを考えていかなくてはなりません。
――どのような切り口が考えられるでしょうか。
辻 面白い話がありますよ。アメリカではトランプ大統領の指示の下、雇用を増やすことに注力しています。そのためAI(人工知能)の導入が進みにくいという現状があります。それに対して日本は、少子高齢化によって労働力が不足しますから、AIの導入を進めやすい環境にあります。AIに関しては日本のほうが先に進む可能性を秘めているといえますね。日本は介護や医療など抱えている課題が多い国ですから、さまざまな規制を撤廃することでイノベーションを起こせば非常に面白い国になると思います。また、AIはすべての産業に関わってきます。日本はとくに製造業の多い国ですから、AIとの相性の良さから見てもチャンスだと思います。
弊社もクラウド会計で自動仕訳のAIを使っていますが、グループ会社の(株)クラビスの技術で、印刷された請求書や領収書などをスキャナーで読み取ると、1日以内にデジタルデータとして返ってくるサービスを提供しています。これにより、バックオフィスで帳票を手入力していた人も、スキャンするだけで翌日にはデジタルデータとして集計することができます。現在はベトナムで入力を行っていますが、ここにAIを導入してさらなる効率化を目指しています。
―中国では、信用度が向上するという理由で個人情報を積極的に開示する動きがあります。私たち日本人にはない感覚ですが、それについてはどう思われますか。
辻 私たちの個人情報に、日本人が警戒するほど重要な情報が含まれているのか、というのが率直な意見です。マイナンバーなどはもっとオープンにした方が便利になるし、行政コストも削減できます。私たちの税金を使っている以上、もう少し合理的に考えたほうが良いのではないかと思っています。
FacebookやTwitterのように、オープンにすることで入ってくる情報もありますので、病気などのセンシティブなものは別として、もっとオープンにするべきだと思います。そもそも現代はデータ社会ですから、個人情報をクローズドにすること自体が無理です。ただ、健全な会社が健全な情報を正しく使えているかどうかを確認する必要はありますし、そう正しく活用できている企業が伸びると思います。
――最後に一言お願いします。
辻 今はクラウドを使ったさまざまなサービスがありますが、チャット1つとっても活用することで、ビジネスのスピードがまったく違います。使わないことで生産性が落ちるため、使わないわけにはいきません。チャットを使いこなすだけでも、他社との差を付けることができますし、まさに武器、戦国時代でいうならば鉄砲です。黙っていて手に入るものではありません、取りに行って初めて収集できるものなので、積極的に動いて情報を収集しビジネスに活用すべきだと考えます。とくに高齢の経営者の方は、難しい、わからないと敬遠しがちですが、何もご自分でやる必要はありません。若いスタッフに全権を委任し、責任をもって取り組んでもらうように指示すれば良いと思います。
これは、生産性を上げる絶好のチャンスです。また、最近では金額的にも機能的にも使いやすくなっていますので、まずは試してみるべきだと思います。(了)
【文・構成:藤田 勇一】<COMPANY INFORMATION>
代 表:辻 庸介
所在地:東京都港区芝5-33-1
森永プラザビル本館17F
設 立:2012年5月
資本金:18億6,592万1,000円
売上高:(16/11)15億4,200万円<プロフィール>
(株)マネーフォワード 代表取締役社長CEO 辻 庸介 氏
京都大学農学部を卒業後、ペンシルバニア大学ウォートン校MBA修了。ソニー(株)、マネックス証券(株)を経て、2012年に(株)マネーフォワード設立。新経済連盟の幹事、経済産業省FinTech検討会合の委員も務める。14年1月、「日本起業家賞2014(The Entrepreneur Awards Japan = TEAJ)」で米国大使館賞受賞。同年2月、「ジャパンベンチャーアワード2014」にて、JVA審査委員長賞受賞。同3月、「金融イノベーションビジネスカンファレンスFIBC2014」にて大賞受賞。16年11月、Forbes Japan「日本のベスト起業家ランキング」にて7位を受賞。同年12月、日経ビジネス「2017年日本に最も影響を与える100人」として選出。関連キーワード
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