2024年11月21日( 木 )

強みを生かした設備工事に徹する~曙設備工業所

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(株)曙設備工業所

企画提案・設計と一体の受注

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 福岡および九州地区のマンション建設の設備工事において、常にその名が挙げられる(株)曙設備工業所。マンションだけでなく老人ホーム、駅舎、商業設備などあらゆるジャンルの建築・構築物の設備工事を手がけることで知られている。

 同社には、ゼネコンに対して積極的な営業活動を行うのではなく、設計事務所を対象に設備設計・施工の企画提案を実施していく特徴があり、それが同社のストロングポイントである。建築物全体の設計業務のうち、設備設計の業務を同社が引き受けることで、設計事務所の省力化につながることがメリットだという。こうして設計事務所との間で信頼関係を築くことで、設計事務所は同社に取引先のマンション・デペロッパーを紹介し、大手・中堅・地場問わず各ゼネコンからの受注を得る。

 また同社は、設計から施工そしてメンテナンスまでを担当することができる。まさしく設備工事におけるワンストップの事業を展開しているのである。同社の工事履歴の実績を見ると、その大半が150~200戸超クラスの物件が次々と大型の物件名が並ぶ(【表】参照)。福岡および九州地区における著名な分譲マンションは、ほとんど同社が関わっているのだ。

 2017年12月期において、同社が手がけたマンションの設計は約5,000戸におよぶ(内訳は分譲マンション3,000戸、賃貸マンション2,000戸)。棟数に換算すると、90〜100棟に相当する。野田弘之代表は、「近年の福岡地区は業界大手が中心となって、九州エネルギー館・九電記念体育館・メルパルク福岡跡地の再開発など、大規模なマンション建設が続々と出てきております。他方、地場デベロッパーは、冷静に市況を見極めながら適正な開発にチャレンジしており、この状況はしばらく続くと予想しております」と業況を分析する。

 同社の業績の60%がマンション建設に関わる受注で、17年12月期の売上高は35億円を見込んでおり、18年12月期は40億円を計画している。すでに成約済の50棟分の設計・施工があり、手持ち工事は約65億円分。マンション物件における同社の受注能力は群を抜いており、同時に企画提案および設計から施工までの技術力と品質を常に改良・進化させている。

 どのようにして同社は、競合優位性を高めることができたのか。その理由は2008年のリーマン・ショック時、同社は同業他社と同じく仕事の量を減らしてきた。しかし、他社が受注量を30%減らしたなか、同社は10%減程度に抑えていたという。なぜなら、そんな厳しい時期だからこそ、同社に協力する職人の仕事の確保を第一に考えていたからだ。

 このころ、同業他社は分譲マンションの空調・設備工事を敬遠するようになった。そこで、同社の存在がクローズアップされるようになったのである。苦境下でも同社は、懸命にマンション建設の案件に取り組んだ。その真摯な事業展開が、同社への信頼をさらに大きくした。地場デベロッパーの物件だけでなく、全国大手マンションデベロッパー物件の受注が舞い込み、1棟の戸数が200戸を超える物件を手がけることも珍しくはなくなった。リーマン・ショック以前から高い評価を得ていた同社は、厳しい環境においてもひたむきにマンション設備工事に取り組んだことで、経験を積み、「マンション設備なら曙設備工業所」という業界内でのステータスを確立させたのである。

 また、16年4月に発生した熊本地震への対応も同社の評価を高めている。熊本県内では多数の建物に甚大な被害が発生し、現在も復興に向けた事業が進められている。当時同社の熊本支店(熊本市東区)のオフィスも大きな被害を受け、いつ崩れてもおかしくない建物の状態であった。余震も頻繁に起こり、従業員は命の危険をも感じたという。

 それでも、同社熊本支店の社員は、同社が手がけた分譲マンションすべてを巡回し、被害状況のリサーチと改修のために全力を尽くしていたのである。支店のオフィス、社員の自宅など同社に関係する建築物の状態が懸念されるなかでも、手がけた物件の安全のために活動する同社の姿勢は、地元の人々の印象に強く残った。

手厚い人材マネジメント

 同社は経営理念として、『我が社は少数精鋭で俊敏かつ誠実に快適環境つくりに邁進しよう。』と掲げている。顧客からの信頼をさらに深めるため、02年4月にISO9001:2008の認証を取得。社内での業務の効率化と標準化を実践している。週の初めには、必ず経営理念と品質方針を全社員で唱和し、常に進むべきベクトルに合わせている。

 そして同社の行動規範である『Jump to it─素早くやる』の実践である。いかなるときも、どのようなケースでも、まずはすばやく行動することを徹底している。とくに前記したような自然災害など、大きな問題が発生したときこそ、即実践を心がけているという。「弊社の仕事は、人々のライフラインである水と空気を提供することです。よって、常に俊敏に敏捷に行動することが求められます。素早くやること、そしてそれを継続することが弊社の原動力です」と語る野田代表。同社の企画提案力と施工力は、この『Jump to it─素早くやる』を誠実に実践していることが源流にあることが理解できる。何よりもすぐに行動することこそ、からの信頼を築ける大きな要因の1つであるから。

 少数精鋭で事業を構築する同社。だからこそ、技術者の育成に対しての投資は積極的に行う。その1つが1、2級管工事施工管理技士および給水装置工事主任技術者取得の奨励とサポートだ。もちろん、新人への教育も手厚く行う。野田代表は、「入社後3年間は教育期間として面倒を見ます。通常1人前の技術者になるには5~7年のところ、3年間で1人立ちできるように、現場での仕事のなかで教育を行います。4年目からは、『自身で仕事をつくり自らが稼ぐ』という自立した仕事をできるように育てます。言い換えれば成果主義ですね。そのような環境下で、1人前の技術者に成長してもらいたいのです。そのためのサポートはどんどん行います。社員とのコミュニケーションも密に行います。良い仕事を通じて豊かな人生を送ってほしいのです」と、人材への思いを語る。群を抜く企画提案力と設計・施工力、即行動、そして成果主義。言葉だけ見るとドライな感覚に思えるが、そこには野田代表の厚い人情と思いやりが込められている。

 自らの強みを最大限に生かして、実直に迅速にそして誠実に事業を構築する同社。人との関わりを大切にし、支えていくという志向が根底に流れている。

【河原 清明】

<COMPANY INFORMATION>
代 表:野田 弘之
所在地:福岡市早良区田村4-15-10
設 立:1982年2月
資本金:6,000万円
売上高:(16/12)32億2,195万円
TEL:092-801-7247
URL:http://kk-akebonosetsubi.com

 

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