西日本フィナンシャルホールディングス、久保田勇夫会長新春経済講演会(3)
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Ⅱ.2017年の回顧
17年は「政治」が深く関わった年に
2018年の見通しを行うためには、17年の回顧が必要でございます。回顧と申し上げましたが、経済の回顧でございますが、17年は経済に政治が深く関わった年だったと思います。
米国の大統領は「アメリカ第一王義」の政策のもとでいろいろなことを提案してまいりました。レジュメに書いております○×は良かった、悪かったということではなくて、トランプ大統領が大統領選挙中にいろいろ約束しましたが、その約束した政策をこれまでやったか、やらなかったかで付けております。まず税制改革でございますが、これは法人税改革、所得税改革ですが、大どころは法人税の減税でございます。これは実際に法案が通りましたので○であります。そしてインフラ投資、これは一兆ドルのインフラ投資を10年間でやるという話がありましたが、まだ法律も通っていませんし、今年はとりあえずこういう事をやりたいというふうなお話が昨年春、財務長官から出ただけであります。これはもう事実上死んでおりまして、これに基づく経済の大幅な活性化はありません。従って×です。TPPの離脱、これは大統領就任間もない1月に直ちに離脱したので、やったという意味で○であります。それからNAFTAの手直しは現在交渉中であります。環境問題についてのパリ協定の離脱は、これは事実上○ですね。それから、オバマ前大統領が作った医療保険制度の廃止、これはわかりづらくいろいろと言っていますが、廃止はできていないわけでございます。実はオバマ医療保険の廃止でもって財源をつくり、その財源を基にして法人税を減税し、全体の財政の赤字を阻止しようということだったのですが、とくに歳出削減効果という点に着目しますと、これは完全に×だと思います。次に対中国強硬策、これは中国に対して45%の関税をかけるとか、通貨の操作国に指定するといったことを言っておりましたが、現在までやっていません。あとでお話しいたします今日の話の1つのポイントでもありますが、欧米の対中国政策がかなりきついものに変わっていくだろうというのが、明確になりつつあるような気がいたしております。
トランプ大統領の就任後、世界政治の不安定化は進みましたし、今後の課題としまして、同大統領の下での政策決定のプロセスが非常に複雑になっています。大統領が非常に難しい、やれそうもないこと、あるいはこれまでの蓄積を壊すようなことを言って、それを基にしてそのまま現実のものにするのは難しい、しかしながら、その約束を実現しなければいけないということで、周りの人、とくに共和党の上下両院の国会議員の人は非常に苦労している。なぜかというと、大きな政策の変更には法律の成立とか、議会の承認が必要である。そういう現実が1つあります。
それからレジュメには財政赤字と書いていますが、これは財政赤字が生じる可能性がかなり出てきている。実は財政赤字が生じる可能性があるということ自体が政治的に問題であります。その規模が大きいかどうかという判断の問題もあるのですが、共和党は伝統的に、法人税は減税、つまり企業は減税する、財政は赤字を出してはならない、小さな政府は結構だ、規制は緩和だ、という主張の党でございますので、財政赤字は大きなイシュー(本質的な論点・問題)であります。そういう意味で財政赤字が生じる可能性があるということだけでも、米国にとっては格別大事なことであります。
(つづく)
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