知られざる中国の現代版シルクロード「一帯一路」戦略の真の狙い(2)
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国際政治経済学者 浜田 和幸 氏
サウジと日本の参加
また、中国の目指す「一帯一路」経済圏には中東やアフリカも含まれる。昨年、1,500人のお供を連れて日本を訪問したサウジアラビアのサルマン国王だが、東京から北京に移動すると、中国との間で日本以上に経済、軍事の両面にわたる協力関係の強化に努めた。とくに、新疆ウイグル自治区などにイスラム教徒を多数抱える中国にとってはサウジアラビアのもつ情報と影響力は是が非でも手に入れたいもの。すでにテロ対策を専門にする特殊部隊の合同演習も始まった。現代版シルクロードの成功には周辺の治安維持が欠かせないからだ。
一方、脱石油社会への変革を模索するサウジは「サウジ・ビジョン2030」を打ち出している。実は、この中期・長期計画にとって、習近平の「一帯一路」は補完効果が期待できるため、両国は50を越える協力プロジェクトに合意した。
欧米諸国から人権問題に絡んでの批判を受けても、習近平は「どこ吹く風」と言わんばかりで、ユーモアたっぷりに切り返す。曰く「靴が合っているかどうかは、靴を履いている本人しかわからない」。厳しい批判にも、中国式の知恵を絡めた自信と迫力で対応する。
独裁的な王室体制には内外から懸念の声も上がっているサウジとは共通点も多く、サルマン国王は習近平との間では日本で見せた以上の笑顔を振りまいていた。トランプ大統領の下で、「アメリカ第一主義」と銘打った孤立主義に走りそうなアメリカとは対照的に、サウジアラビアも中国もこの「一帯一路」と「サウジ・ビジョン2030」を合体させることで、より開かれた通商貿易体制をアピールしようと試みている。
昨年、北京で開催された「一帯一路」国際協力サミットを成功させるため、習近平指導部は準備に万全を期してきた。日本からは経団連の榊原定征会長始め、安倍総理の補佐官も二階氏に同行するかたちで参加。これまで日本企業はこの「一帯一路計画」には関心は寄せてきたものの、具体的な関与については様子見状態であった。しかし、前回のサミットをきっかけに流れが急速に変わり始めた。
そして本年5月、東京で開催された日中韓首脳会談の折に実現した日中首脳会談では日中両国が第3国において共同プロジェクトを推進するためのフォーラムを官民合同で設立することが決まった。これこそ、「一帯一路計画」への日本の参加を後押しさせようとする政策にほかならない。アジアのみならず中東、ヨーロッパ、そしてアフリカにも経済圏を拡大しようとする中国の夢に、日本も遅まきながら与しようとする動きであろう。「日中一帯一路促進会」もスタートした。本年は日中平和友好条約締結40周年ということもあり、経済界を中心に、「一帯一路」に関するセミナーや商談会が目白押しである。
(つづく)
<プロフィール>
浜田 和幸(はまだ・かずゆき)
国際未来科学研究所主宰。国際政治経済学者。東京外国語大学中国科卒。米ジョージ・ワシントン大学政治学博士。新日本製鐵、米戦略国際問題研究所、米議会調査局などを経て、現職。2010年7月、参議院議員選挙・鳥取選挙区で初当選をはたした。11年6月、自民党を離党し無所属で総務大臣政務官に就任し、震災復興に尽力。外務大臣政務官、東日本大震災復興対策本部員も務めた。16年7月にネット出版した原田翔太氏との共著『未来予見~「未来が見える人」は何をやっているのか?21世紀版知的未来学入門~』(ユナイテッドリンクスジャパン)がアマゾンでベストセラーに。関連キーワード
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