国連ハビタット福岡本部、持続可能なまちづくりのための連携を加速

 国連ハビタット福岡本部は16日、「アジア・太平洋地域の『持続可能なまちづくり』のための福岡プラットフォーム(Fukuoka-SUSCAP)」第1回ネットワークセミナーを福岡市においてハイブリッド形式で開催した。同プラットフォームは、日本の産官学市民セクターの海外展開・連携促進を目的に今年設立され、10日には東京でもセミナーを開催している。

 来賓挨拶では、藏内勇夫世界獣医師会次期会長(福岡県議会議長)が、人と動物の健康、環境の健全性は一体であるというワンヘルスの重要性を強調し、国連ハビタットの活動との連携に意欲を示したほか、大曲昭恵福岡県副知事が、県として住環境と衛生環境の整備支援を継続し、県内企業や技術の海外展開、人材育成での連携を進めると表明した。瓜生道明国連ハビタット福岡本部協力委員会会長(九州電力会長)は、同委員会の活動と財政支援の現状を説明し、福岡本部が重要な役割を担ってきたと評価する一方で、予算面において福岡県・福岡市に大きく依拠している現状について問題提起を行った。

石垣和子国連ハビタット福岡本部長    石垣和子国連ハビタット福岡本部長は講演において、アジア太平洋地域では2050年までに都市人口が大幅に増加すると予測されるが、インフラや住宅の整備が追いつかないボトルネックが生じることへの懸念に加え、自然災害に脆弱な都市が多く、気候変動の影響でリスクがさらに高まっている現状を説明した。そのうえでハビタットの重点的な活動について、住宅、土地、水などのベーシックサービスの確保、貧困撲滅、人道危機における予防・復旧・復興、環境・気候変動対策を挙げた。また、子どものときに受けた刺激は忘れにくいとして、小中学校での出前授業を積極的に行うなど、持続可能なまちづくりを担う次世代の人材の育成に注力すると述べた。

 パネルディスカッションでは、事業者、支援機構、メディアなどさまざまな立場からの意見交換が行われた。国連ハビタットとの連携によりインフラ設備を海外に設置している企業は、知名度向上や信頼獲得につながったと話す。また、目的別のファンド創設の提案も行った。JICA九州は自身のネットワークなど連携において生かせるポテンシャルについて紹介するとともに、企業、福岡市と連携して展開する事例を紹介した。モデレーターからは、中小企業や個人の立場では難しい活動も、国連ハビタットのような機関やプラットフォームがつながる場となることで実現できるのではないかとの期待を表明した。

パネルディスカッション

 国連ハビタット福岡本部は引き続きプラットフォーム会員を募集しているほか、8月にもイベントの開催を予定している。

【茅野雅弘】

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