2024年11月25日( 月 )

東京オリンピックの成功を左右する『医療通訳』による『おもてなし』(後編)

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 NetIB-Newsでは、「未来トレンド分析シリーズ」の連載でもお馴染みの国際政治経済学者の浜田和幸氏のメルマガ「浜田和幸の世界最新トレンドとビジネスチャンス」から、一部を抜粋して紹介する。今回は、2018年8月3日付の記事を紹介する。


 日本が誇る和食の文化や歴史的な伝統芸能を満喫してもらうためにも、万が一、病気になった場合に、自国の言葉で症状を医師や看護士に伝えることができるかどうかは大きな問題である。こうした外国人の不安を解消するため、わが国では全国で2,000人を超える医療ボランティアと呼ばれる方々が、さまざまな医療の現場で活動している。ある意味では「言葉の救急車」と位置づけられる人たちに他ならない。

 北海道の「エスニコ」と呼ばれるボランティア団体から「MIC神奈川」「多文化共生センターきょうと」「伊賀の伝丸(つたまる)」「みのお外国人医療サポートネット」「鳥取県国際交流財団」など全国各地の自治体が地元NPOなど市民団体と協力し、市民ボランティアとしての医療通訳従事者の育成に取り組んでいる。神奈川県の場合、近年、年間4,200件を超える医療通訳を派遣した実績を誇る。

 では、どのような言語の通訳が求められているのであろうか。神奈川県の場合には、一番需要が多かったのが1,579件のスペイン語。次いで1,237件の中国語、次が1,225件の英語であった。また、387件のポルトガル語や177件のタガログ語など、多言語の通訳が求められている。国際的な共通言語は英語ではあるのだが、英語の通じない外国人は意外に多いことが、このデータからも読み取れる。多言語通訳の必要性があるわけだ。

 しかし、このような医療通訳に対して、神奈川県が支払っている報奨金は1時間で1,000円、しかも交通費込みという。専門性の高い仕事であり、人の生命にかかわる大切な役割でありながら、報酬面では極めて厳しい状況といえそうだ。公募を通じて集まってきたボランティアの人たちの好意にすがり、ある意味で過酷な仕事を担わせているのが実態といえるかもしれない。身分の保障もなければ、万が一、医師と患者の意思の疎通がうまくいかないことによる問題が生じたときの対応など、国際化する日本のなかで医療通訳者の直面する課題は根が深いと思われる。

 神奈川県の場合、現在、登録しているボランティア医療通訳の数は180人。全国の約1割の医療通訳者に当たる。しかし、これから外国人の数が増えるにつれ、医療通訳者の需要が高まることは避けられない。にもかかわらず、1,000万人を超えるマーケットに2,000人のサービス提供者というのでは、明らかに人材不足であろう。

 そこで厚生労働省では、2014年度から特別予算を計上し、外国人向けの医療受診の際の説明資料の作成や、医療通訳者の育成のためのカリキュラムを作成、また多言語対応のできる拠点病院を2020年までに全国30カ所整備するための準備に取り組み始めている。

※続きは8月3日のメルマガ版「東京オリンピックの成功を左右する“医療通訳”による“おもてなし”(後編)」で。


著者:浜田和幸
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