【追悼寄稿/目取真俊】命がけで示した、沖縄の「闘う民意」~翁長知事の死を、日本人はどう受け止めるのか
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8月8日、沖縄県の翁長雄志知事が急逝した。その3日後の11日に開かれた「埋め立て土砂の投入を許さない県民大会」には、主催者発表で7万人余の市民が集まった。
台風の影響で雨が降るなか、参加者の視線は壇上に置かれた「辺野古ブルー」の帽子に注がれていた。本来ならこの帽子をかぶって、翁長知事が辺野古埋め立て承認の撤回を宣言する場になっていただろう。しかし、いまその人はいない。それでも参加者の多くが、翁長知事の存在を強く感じていたはずだ。
雨に煙る会場を包んでいたのは、悲しみだけではない。癌の手術を受け、治療を続けながらも最後まで日本政府と対峙し続けた翁長知事への敬意と、そこまで追い詰めた日本政府・安倍政権への怒りが、いつもの県民大会とは違う雰囲気をつくり出していた。
現職の知事が亡くなるのは、沖縄にとって初めてのことであり、その衝撃の大きさはいうまでもない。しかし、沖縄でいま、翁長知事への哀悼や感謝、敬意があふれているのは、翁長知事が命を懸けて沖縄の「闘う民意」を示したからだ。
沖縄をないがしろにする安倍政権に対して「うちなーんちゅ、うしぇてーないびらんどー」(沖縄県民をないがしろにするな)という声を、その生き様で示したことに、沖縄の人々は胸を打たれたのだ。ヤマトゥの圧政に抵抗する、うちなーんちゅーの代表の姿が人々の心を奮い立たせている。
辺野古の海はいま厳しい状況にある。護岸で囲まれた海に、日本政府は土砂投入を強行しようとしている。沖縄がどれだけ抗議し、反対しようとも、無視して民意を踏みにじる。安倍政権のそのような横暴を許しているのは誰か。沖縄の犠牲のうえに平和と安心を満喫している大多数の日本人だ。
全国には47人の都道府県知事がいる。しかし、翁長知事のように政府と正面から対峙し、闘い、攻撃された知事はいない。基地が集中しているがゆえに、沖縄県知事はそのような過酷な地位に置かれている。ヤマトゥに住む日本人はそれで良しとするのか。
【目取真 俊/小説家】
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