歴史的な転換点
建設産業専門団体九州地区連合会(以下、建専連九州)は7月13日、八仙閣本店(福岡市博多区)で第23回定期総会を開催し、2025年度事業報告・決算および26年度事業計画などを承認した。
資材価格の高騰や担い手不足、時間外労働の上限規制への対応など、建設業界を取り巻く環境が大きく変化するなか、専門工事業者が一体となって課題解決に取り組む方針を確認した。
宮村博良会長は、「建設産業は歴史的な転換期にある。地域インフラや災害復旧を支える専門工事業者が役割をはたし続けるためには、加盟14団体が職域を超えて結束し、行政や発注者へ積極的に声を届けることが重要だ」とあいさつした。
25年度は、国土交通省九州地方整備局(以下、九地整)職員を対象とした出前授業を4年連続で実施。専門工事業の役割や施工技術を紹介する研修は、整備局の正式な研修カリキュラムとして定着した。また、九州各県との意見交換会や高校での学校キャラバンを継続し、テレビ各局でも活動が紹介されるなど、業界の認知向上に取り組んだ。
26年度は、YouTubeやInstagramを活用した情報発信を本格化する。技能者へのインタビュー動画を配信し、学校で配布するパンフレットにQRコードを掲載することで、生徒や保護者へ建設業の魅力を伝える。建設業に対する理解を深め、若年層の入職促進につなげたい考えだ。
標準労務費実効性確保へ
総会後には、九地整・垣下禎裕局長以下17名と建専連九州支部長との意見交換会が開かれ、標準労務費の実効性確保や担い手不足、猛暑下での作業環境改善などについての議論が行われた。
冒頭、建専連九州の宮村会長は、専門工事業者が地域インフラの維持や災害復旧の最前線を担っていることに触れ、「資材価格の高騰や担い手不足、働き方改革への対応は、個々の企業だけで解決できる問題ではない。職域を超えて結束し、現場の声を行政や発注者へ論理的かつ力強く届けていく必要がある」と強調。行政と業界が現状を共有し、制度面を含めた改善につなげることへの期待を示した。
建専連は、福岡市では天神ビッグバンや博多コネクティッド、熊本県では半導体関連工事、沖縄県や鹿児島県馬毛島では防衛関連工事によって技能者需要が高まる一方、地域や元請企業の規模によって労務単価に大きな格差が生じている現状を説明。(一社)日本建設連合会加盟の大手企業と地場企業の間では、技能者1人あたり1万円~1万8,000円程度の差があるとして、処遇格差が担い手確保を難しくしていると訴えた。
九地整は、建設Gメンによる調査状況を報告した。139社を調査し、72社に改善指導を実施。不適切な事例では、労務費や法定福利費、安全対策費などの必要経費を明示していない見積書が多く確認されたという。改正建設業法を踏まえ、見積書の適切な作成・保存と、適正な価格交渉の徹底を求めた。
建専連の岩田正吾会長は、見積もりの基礎には設計労務単価を用いるべきだと指摘。法定福利費や安全対策費を含む雇用経費についても、「値引き競争の対象にしてはならない」と述べ、行政側に実効性ある指導を求めた。
建設業の夏休みを提言
近年の猛暑への対応も主要な議題となった。建専連側からは、WBGT(暑さ指数)が高い状況での作業中止基準を明確にするよう求める意見が出た。
岩田会長は、「職人の命を守るため、建設業にも夏休みが必要だ」と述べ、夏季休業を実施しやすい環境づくりを提言。猛暑下で工事を続けざるを得ない場合には、生産性の低下や安全対策に要する費用を考慮し、通常より5割程度高い「オプション料金」を設定する考え方も示した。
これに対し九地整は、猛暑による作業効率の低下や熱中症対策費を積算へ反映する「熱中症対策サポートパッケージ」を説明。「受注者が工期内で夏季休業期間を設定できる試行工事も進めており、今後さらに対象を拡大していきたい」と応じた。
担い手確保へ危機感共有
意見交換会の終盤、岩田会長は今後の重点課題として、改めて「標準労務費の実効性確保」「建設業の夏休み」「担い手確保」の3点を挙げ、「福利厚生や安全対策に必要な経費まで価格競争の対象にしてはならない」と強調したうえで、「今が建設業の『変われる最後のチャンス』だ。若い人が『この業界で働きたい』と思える環境をつくらなければならない」と訴えた。
また、九地整の長瀬洋裕建政部長は、自身の実家が営む建設会社について「担い手を確保できず、今月休業を決めた」と明かし、「担い手不足は決して他人事ではない」と危機感を示した。今回の意見交換会は、行政と専門工事業者が課題を共有し、適正な労務費の確保や働き方改革を通じて、持続可能な建設産業を目指す方向性を確認する場となった。

【内山義之】

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