『脊振の自然に魅せられて』「スズコウジュ」シソ科シソ族~日本独特の固有種
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山の季節はすっかり秋になりました。
今年は7月の豪雨の後、猛暑が続き、めぐみの雨は降らずじまいで山の植物にとっては過酷な日々だったと思います。それでも植物は季節を感じ、花を咲かせ始めています。
春の花は冬から目覚め、陽の恵を受けて暖かさを感じながら花を咲かせていきます。秋の花は下がり行く気温を感じながら、花を咲かせていきます。朝の冷え込みが強くなってくると、葉や花に朝露を付け、自らの水分を根に落としていきます。生きるための知恵です。お盆を過ぎ、朝夕の涼しさを感じ始めるころ、脊振の山では小さな純白の花が、そよ風に吹かれながら開花準備をしています。
シソ科の「スズコウジュ」です。背丈は15cm前後で花の直径は5ミリぐらい。茎は小さいですが、多くの蕾から少しずつ花を咲かせます。ところどころ葉が虫に食われていますが、とても可愛い鈴のかたちをした純白の花です。
この花との出会いは、女性登山者が「今年は咲いているかな」と花に挨拶をして登って行く姿を目にしたことがきっかけです。翌年、その場所が気になって訪れてみると、小さな花が咲いていました。限られたわずかな場所で健気に生きのびていたのです。この花の撮影には苦労させられます、花が小さいので至近距離からレンズを向ける必要があります。かたちの良い花(べっぴんさん)を見つけたら、三脚をローアングルにします。そして周りの花を踏まないよう気をつけてピントを合わせます。風が吹いて花が揺れる、周りが薄暗く露出不足。レンズをあれこれ変えてみる、太陽が差し込むと花の色が白飛びをする(メリハリがなくなって、白一色になる)などなど。何度撮影に行っても満足できる写真が撮れません。
今年は8月末から毎週、会いに行きました。少しずつ咲き始めてはいますが花の数と開き具合が悪く、形の良いものがない。4度目の訪問で、ようやく花の数も増え、姿形たちの良い花が咲き、少しは満足できる写真が撮影できました。
また撮影条件が最高でした。曇り空、しかも早朝だったので風もなく、スズコウジュは静かに私の来るのを待っていました。そして花との素敵な対話ができました。もう一度だけ会いに行こうと思っています。※ 最近、NHKで放映された「プロフェッショナルの仕事の流儀」の映像を見ました。主人公は長崎県平戸市在住の世界的に有名な昆虫写真家の栗林慧先生です。80歳を前にして昆虫に向き合う情熱とイメージ通りの撮影を追求するエネルギーにとても感銘を受けました。私は数年前、お天気教室の仲間と栗林先生を訪問したことがあります。
花との対話を重ね、もっともっと撮影を楽しみたいと思っています。これからしばらく秋シリーズが続きます。2018年9月15日 記
脊振の自然を愛する会
代表 池田 友行関連キーワード
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