ベトナム成長の背景は?(後)
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日韓ビジネスコンサルタント 劉明鎬(在日経歴20年)
ベトナムは1990年代には年1兆円くらいの貿易赤字を記録していたが、2015年には3,000億円程度の貿易黒字に転じている。ベトナムの産業団地の土地面積だけを見ても、ベトナムで産業化がどれほど進展したかがよくわかる。1986年には産業団地の面積は33haだったのに、現在は8万haで、20年ぶりに230倍以上大きくなっている。ベトナムのGDPは2,400億ドルで、今後も高い経済成長が見込まれている。
ベトナムの魅力は、平均年齢が若いこと、人件費が安いこと、お箸を使う文化なので手先が器用なこと、儒教と漢字の文化圏で、農業人口が60%ほどを占めていて、今後都市化が進めば、労働人口が豊富であることなどが挙げられる。ベトナムの2大都市であるハノイとホーチミンの人口は合計で1,500万人ほどだ。
しかし、ベトナム人は少しでも給料が高いところがあれば、すぐ転職してしまうとか、仕事が残っているのに、時刻になったら帰宅するとか、責任感が欠けているとか、現地で経営していると、カルチャーショックを受けることも多いようだ。ベトナムは中国、米国、日本についで韓国の第4位の貿易相手国である。もうすぐ日本を抜いて3位になることも予想されている。累計投資額を見ても、韓国はベトナムにどれほど注力しているかがわかる。今年上半期までのベトナムへの累積投資額は607億ドルで、日本へは490億ドル、米国は100億ドルなので、比較しただけで、ベトナムへの投資がどれほど大きいかが見て取れる。
サムスン電子はベトナムに携帯電話の生産工場をもっている。その工場は世界最大の携帯電話工場でもある。従業員数は13万人ほどだ。サムスン電子の輸出額はベトナムの輸出全体の25%を占めている。ベトナムの輸出全体の外国企業の割合は6割以上だが、そのなかでサムスンとLGが35%を占めているようだ。ベトナムは輸出が増大することによって、2015年から貿易も黒字に転じている。統計によるとベトナムに進出した韓国企業数は6883社である。
ベトナムは共産主義国家なので、土地の私有化は認めていないのは中国と同じ。50年間賃貸が可能で、1回の延長が可能なので、土地は100年間借りられることになる。ベトナムでの会社設立は、ほかの国と違い、現地企業との合弁が必須ではなく、単独で会社設立が可能なことも大きな特徴の1つである。それに、現在は労働者の権利より事業者のほうが有利になるような労働法になっているようだ。サムスン電子は2015年までベトナムに170億ドルを投資している。韓国企業がベトナムで比較的成功しているのは、ベトナム戦争に参加したことによるベトナムへの興味と関心が高いこと、また韓国は北朝鮮という共産主義国家と対峙していて、共産主義国家体制を比較的良く理解していることだ。一方、ほかの国は共産主義国家に及び腰で積極的に市場進出できなかったことが成功できていない原因ではなかろうか。今後、間違いなく成長していく東南アジア市場、ベトナムにおける成功は東南アジア市場での成功の試金石になりそうだ。
(了)
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