自由診療の現場から～再生医療・PRP（自己多血小板血漿療法）（中）

福岡整形外科病院　碇 博哉 医長

PRPは入院不要、外来診療で完結

　――どのような患者さんに適用されるのでしょうか。

　碇　ご高齢の方から現役のスポーツ選手まで、幅広い患者さんに適用できると考えています。ご高齢の方の変形性膝関節症が主ですが、当院はアビスパのチームドクターを務めていますから、サッカー選手に多い膝蓋腱炎なども対象になります。一般に変形性膝関節症の患者さんには、リハビリや筋力トレーニング、足底板をつくるなどの治療行為に加え、膝関節内に軟骨の成分であるヒアルロン酸を注入して関節を滑らかにするという治療法があります。これで効果がなければ、関節鏡を入れて半月板の一部を切除・縫合したり、人工関節に置換したりするなどの手術になります。PRP療法は、いってみればヒアルロン酸注入の一段階上の治療法だ、ということになります。

　――PRP療法では患者さんから採血した血液を遠心分離してPRPを抽出しますが、これにはどのくらいの時間が必要なのでしょうか。

　碇　採血から抽出まで、およそ30分前後です。入院する必要はなく、外来での受診で済みます。

　――PRP療法は、従来の治療法と比較してどのような効果が期待されるでしょうか。

　碇　まず、痛みや炎症を抑えることが期待されます。とはいえ、人工関節への置換を検討するような末期の患者さんに対して劇的な効果があるとまではいえません。どの程度の効果があるかは、実際に治療を行ってみてからということになります。

　――手術が必要な状態から、痛みもきれいさっぱりなくなる……というものではないのですね。

　碇　はい。どの程度の状態ならPRP療法を適用できるかは、今後症例が増えていくなかで線引きができていくと思います。

　――PRPの注入は、どれくらいの頻度で行うものでしょうか。

　碇　症状によって異なりますが、たとえばヒアルロン酸のように毎週注射をする、とはならないと思います。1回もしくは2回注入して、しばらく効果を観察するというかたちが多くなるのではないでしょうか。

　――PRP療法には、副作用などを含めた危険性というものはあるのでしょうか。

　碇　一般的には、ほとんどないと考えられています。もともと自分の血液を基にした成分を注入するわけですから。もちろん、PRP成分を注入する際の感染のリスクなどはゼロではありませんが、これは通常の注射や点滴でも同じことです。自分で経験したわけではありませんが、危険性はほとんどないと思います。

　――海外や、学会発表などでも問題のある副作用についての報告はないということですね。

　碇　大きな問題が起きたという報告はありません。ご安心いただける治療法だと考えています。

　――今現在、福岡市内でPRP療法を行っている病院はあるのでしょうか。

　碇　おそらくないのではないでしょうか。当院が福岡市内では最初ということになりますね。

　――福岡整形外科病院さんには、「PRP療法をやってみたい」という患者さんは来ているのですか。

　碇　かなりお問い合わせをいただいています。先日テレビ番組でも取り上げられたということで、認知度が高まっています。最近患者さんはご自分でもいろいろな情報を集められますから、僕自身も診察中に患者さんから聞かれることが増えました。月に10回以上はあるのではないでしょうか。なかには「東京にPRP療法を受けに行きます」という患者さんもいらっしゃいました。現在も、PRP療法を行っている整形外科はかなり限られています。全国でも数えるほどしかない、という時期もありました。そうなると、最良の治療法を求めて、お金を出してでも遠くまで行く、という患者さんも多かったですね。「PRP療法、当院でもできるようになりますよ」とお話すると、「では待っておきます！」と言っていただくこともありました。

　――そういう意味では、待望の治療法ということになりますね。

　碇　多くのご期待をいただいていることは間違いないと思います。

（つづく）

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病床数：175床（一般101床・地域包括ケア病棟74床）
診療科目：整形外科・リウマチ科・リハビリテーション科・麻酔科
診療日：月～土曜日
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