韓服(ハンボク)は危機に瀕しているのか?~現代社会との融合と伝統継承(後)
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日韓ビジネスコンサルタント 劉 明鎬 氏
最近では、ハンボクを着た写真をSNSに投稿することや、日本の着物レンタルのように観光客などを相手にしたハンボクのレンタルビジネスが人気を博している。しかし、レンタルビジネスはハンボクの普及にはあまり貢献していないようだ。
以下、ハンボクの現状を見てみよう。
韓国繊維産業(連)によると、韓国のハンボク市場規模は約1兆3,000億ウォンで、このなかで生地などを除くハンボク既製品の販売市場は、6,000億ウォン程度であると推定されている。1997年のアジア通貨危機の時には韓国最古の市場といわれる広蔵市場(クアンジャンシジャン)にはハンボク販売店は300店舗ほどがあったが、2018年現在は60店舗くらいに減少しており、 その理由として、ハンボクを購入せずレンタルする人が増加したことで、価格の安いインターネットショッピングなどに客を奪われたこと、また、生活習慣の変化(結婚式の儀式の簡素化)などでハンボクの需要が激減したことだという。韓国統計庁によると、2005年の韓国内のハンボク製造会社は4,506社だったが、2014年には3,054社となり32.2%も減少している。また、韓国内でハンボク製造に従事する人も6,262名から4,478名に28.5%も減少、人件費の安い東南アジアや中国で製造するようになった。
また、教育現場では、就職が難しいという理由から韓国国内で唯一残っていた大学のハンボク専攻過程がなくなり、ハンボクについて専門的に教育する学校が消滅してしまった。このような趨勢のなか、1990年代に伝統ハンボクを現代の生活に合わせてアレンジした“生活ハンボク”が誕生した。“生活ハンボク”は、当初ハンボクの伝統を守っていたが、徐々に機能性・デザイン性を改良し、― たとえば、チマとチョゴリを縫い合わせてワンピース風にしたり、水洗い可能な生地にしたり、価格も3万ウォン~10万ウォンと手ごろな価格にするなど― 変身を遂げ、最初10代~30代の若い人を中心に人気となり、現在では40代~50代にまで拡がった。しかし、専門家は“生活ハンボク”の普及による、安くて、粗悪な品質のハンボクが出回っていることを憂慮しているようだ。
ハンボクには改良していくべきこと、民族の矜持としての伝統を守るということとこれらの共存について熟慮していく必要がある。そして一番大切なことは「ハンボクを現代に生きる人間が日常的に着る」ということであり、このことこそが、ハンボクの機能性の改善と伝統継承の共存を実現させる具体的アクションとなることは間違いない。
(了)
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