福岡市政だより「宿泊税特集」で印象操作か?
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書かれていない「空の玄関口」
宿泊税の導入をめぐり、平行線をたどる福岡県と福岡市。政治生命を賭けてトップ対談に臨むとした小川洋知事だが、その見通しも立たないまま。そのようななか、宿泊税の市の財源化について正当性を主張する福岡市が、市民に配布する広報誌「福岡市政だより」であたかも県が市の観光関連で何もやっていないかのように思わせる印象操作を行っている疑いが強まった。
「福岡市政だより」の11月1日号で組まれた「宿泊税特集」。そのなかで市は、「観光客の受け入れで最も費用が必要なもの」として、クルーズ船向けの港湾施設や博多駅周辺の整備に「相応の費用が必要であり、その財源を確保するために、宿泊税は市が徴収すべき」と主張。表を用いて、市の負担金額をわかりやすく示している(画像参照)。同表では、多額の費用を負担する市に対し、県は全項目「0円」と表示されている。この特集を読み、「実際に市税で負担している市の財源とすべきだ」と思う市民は決して少なくはないだろう。
しかし、この表には、とんでもないトリックが仕掛けられていた。「海の玄関口」(博多港)、「陸の玄関口」(博多駅)の一方で、「空の玄関口」(福岡空港)が“ない”のである。福岡県は、平成30年度予算で、「空港整備促進費」として67億6,464万円を支出している。ホテル業界関係者からは「クルーズ船で来る観光客は、市内のホテルに泊まらない」という声も。“都心に近い利便性の高い空港”として喧伝される福岡空港が、福岡市の観光においても重要な役割をはたしていることは周知の事実である。
問題の表について、宿泊税を担当する市経済観光文化局観光産業課は、「近年のもので福岡市が多く負担している主な事例を示したもの」と説明。しかしながら、同表の説明は「表中の数字は昨年度までにかかった費用と今年度の予算額を合算したもの」とあるだけ。さらには、注釈をつけて、これから建設が行われる第2期展示場などの費用約95億円まで盛り込んでいる。
福岡市で暮らす福岡県民のために使われている県予算はまだほかにもある。【表】は、平成30年度予算で金額が1億円以上のものからより市民生活への関係性が高いと考えたものを抜粋した。漁港や河川、水道施設などインフラ整備、医療、教育、児童福祉、雇用対策、文化・スポーツ振興など、実にさまざまな分野の補助金や助成金などを県が負担している。その合計額は153事業で計325億6,904万円にのぼる。
この“福岡市民のための県予算”があったからこそ、市は、限られた財源で、「九州の玄関口」のために予算を割くことができたのではないだろうか。港湾の整備を政令指定都市である福岡市が担当することは制度上の仕組みであって、県が意図的にやっていないというものではない。都合の良い部分を切り取り、あたかも県が何もやっていないかのように見せる行為は、事実上の印象操作。県民・市民に間違った情報を与えることなく、真っ当な議論を行うべきだ。
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【山下 康太】
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