2024年12月25日( 水 )

ドーピング問題で浮き彫りになる統合医療の必要性(前)

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自民党・統合医療推進議員連盟 会長代行 橋本  聖子 氏

予防医療に徹していけば医療費をもっと減らせる

 今年6月13日に参議院で可決・成立した「スポーツにおけるドーピングの防止活動の推進に関する法律」が10月1日に施行された。アンチ・ドーピングの法整備は、来年開催されるラグビーワールドカップ2019日本大会、そして、2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向け、クリーンなスポーツを目指す日本の強いコミットメントを世界へ発信することを意味するが、その一方でドーピング問題は、薬物に頼らない統合医療の必要性を改めて浮き彫りにした。自らがアスリートとしてアンチ・ドーピングを実践してきた経験から、統合医療的ケアの重要性を提唱する自由民主党の橋本聖子参議院議員に、統合医療推進の経緯と今後の展望を聞いた。

 ――アンチ・ドーピング法が10月1日に施行されました。今後は薬物の利用に注意が必要ですが、過去にはサプリメント摂取が原因と見られるドーピング違反事例が発生していますね。

 橋本 ドーピング防止法では、アンチ・ドーピングに関わる専門家の育成、アンチ・ドーピングに関する社会一般への教育・啓発活動の推進および関係機関間の情報共有の仕組みなどが明記されており、日本国内におけるスポーツの公正さ公平さの確保を目指しています。

 私もアスリートとして、スピードスケートで冬季オリンピック、自転車競技で夏季オリンピックに参加させていただくことができました。実は一般にはあまり知られていませんが、オリンピック選手はもちろんのことさまざまなスポーツ競技において、アスリートの健康維持、体力維持は、統合医療的なケアで成り立っているのです。

 たとえば、オリンピック選手の場合、風邪をひいたからといって簡単に風邪薬は飲めません。なぜなら、ドーピングに引っかかる危険性があるからです。かつて海外のある選手が育毛剤を使ってドーピングに引っかかったことがありました。当時は、「育毛剤もダメなのか」と驚きましたが、後になってその選手は育毛剤のなかにステロイド剤を入れていたことがわかりました。ホルモン剤などは皮膚からも吸収されるのです。それ以来、WADA(世界アンチ・ドーピング機構)が問題ないと認めた成分以外は塗り薬も使えなくなりました。

 そのため、アスリートは薬を飲まずに健康を維持することが鉄則なのです。怪我をしにくい身体、風邪をひきにくい身体をつくるためには自然治癒力を高めることが基本です。ドーピング問題をきっかけにアスリートは、「病気になったら薬を飲む」という意識から、「病気にならないように自然治癒力を高める工夫をする」という意識に変わってきました。こうした意識改革が必要なのは、決してアスリートだけではありません。少子高齢社会で社会保障負担が増大している今こそ、国民1人ひとりが予防意識を自覚すべきではないでしょうか。自然治癒力を高め、予防医療に徹していけば医療費をもっと減らすことができるはずです。

(つづく)

【取材・文・構成:吉村 敏】

<プロフィール>
橋本 聖子(はしもと・せいこ)

1964年、北海道生まれ。84年、冬季オリンピック・サラエボ大会出場(スピードスケート)。88年、冬季オリンピック・カルガリー大会出場(スピードスケート)。同年、夏季オリンピック・ソウル大会出場(自転車競技)。90年、世界選手権総合銀メダル(スピードスケート)。92年、冬季オリンピック・アルベールビル大会出場(スピードスケート)、1,500m銅メダル獲得(日本人女子初)。同年、夏季オリンピック・バルセロナ大会出場(自転車競技)。94年、冬季オリンピック・リレハンメル大会出場(スピードスケート)、3,000m6位入賞。95年7月、参議院議員自由民主党比例代表に当選。96年、夏季オリンピック・アトランタ大会出場(自転車競技)。現在、参議院自由民主党議員会長、(公財)東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会理事、(公財)日本オリンピック委員会副会長など。

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