【福岡県】廃タイヤを15年以上放置しても優良業者?~嘉麻市産廃拡張問題
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当時の担当県職員2名に証人尋問
産業廃棄物処理法に抵触する操業実態があった福岡県嘉麻市の産廃最終処分場に、福岡県が拡張許可を与えていた可能性が浮上した。
福岡県嘉麻市の(株)エコジャパン(福岡県嘉麻市)が操業する産業廃棄物 安定型最終処分場の拡張許可について、地域住民が福岡県に許可の取り消しを求めている裁判。15日、福岡地裁で、同処分場の立入調査や指導、拡張許可の審査に関わった県職員2名への証人尋問が行われた。
拡張許可をめぐり、地域住民がとくに問題視しているのは、エコジャパンの最終処分場外に廃タイヤが長期間にわたって置かれていたという事実だ。県の報告書によると、廃タイヤは02年頃ごろに有価物として購入され、少なくとも15年以上は存在していたという。環境省は、「野積みされた使用済みタイヤは、蚊、はえその他の害虫の発生源となるなど生活環境の保全および公衆衛生の向上に支障を生ずるおそれがある」ことから、同省指針で、所有者が有価物と主張しても180日以上放置されているものについては廃棄物とみなすようにとしている。いうまでもなく“15年以上の放置”は、産業廃棄物処理法に違反する可能性が高い。
県は、この廃タイヤが違法であるとの地域住民の指摘を受けて、16年6月30日に同処分場に対する立入調査を実施。その存在を確認していたが、翌7月に拡張許可が出された。原告側の代理人弁護士の質問に、審査を担当した県職員(当時、環境部廃棄物対策課施設第2係係長)は、15年前から長年にわたって廃タイヤが置かれているとの認識はあったが「(審査において)問題になると判断しなかった」と回答した。
繰り返されていた行政指導
エコジャパンが、過去、幾度となく県から指導を受けてきた事実も尋問のなかで取り上げられた。「処分場入口付近に瓦くずがあり、場内で処分するよう指導」(07年7月)、「火災が発生したため、重機でゴミを掻き揚げて発熱箇所および可燃物を調査」(07年9月)、「県外トレーラーが搬入した廃棄物を展開検査せずに重機で埋め立て」(08年1月)、「許可範囲外に廃棄物を埋め立てたため、厳重注意書交付」(08年3月)など。
07年5月から10年3月まで、嘉穂鞍手保健福祉環境事務所で環境指導課第2係長を務めていた県職員は、同処分場への立入調査を200回程度行ったが、展開検査(埋め立てが許された廃棄物以外のものが混入していないか、搬入された廃棄物を広げて確認する検査)の実施を直接確認できたのは3回。しかし、展開検査の実施についてたびたび、エコジャパンに指導した件については、あくまでも「注意喚起のため」と主張する。
本裁判の争点は、処分場の拡張許可を与えられた事業者が適格要件を満たしていたかどうか。数々の問題事実から不適格と見なし、自然環境および日常生活への悪影響を危惧する地域住民側に対し、県側は、問題はあったが都度改善され、適格であったと反論する。
ずさんな実態に募る不信感
嘉麻市では、17年5月に別の産業廃棄物 中間処理施設で、鎮火まで1カ月弱を要する大規模火災が発生。市内広範囲に煙が蔓延したことから、地域住民に外出制限までかかる事態となった。前出の通り、過去、エコジャパンの最終処分場でも火災が発生しており、地域住民は、同処分場の拡張に強い不安と、指導不足が否めない県に対して不信感を抱いている。
今回の尋問では、立入調査などの報告書に書かれている内容について、書いた本人(県職員)が「記憶にない」と何度も繰り返したほか、問題の廃タイヤについても結局のところ、有価物とするエコジャパンの言い分を鵜呑みにしていた。また、有識者が「目視や肌ざわりでの識別は無理」とする「カーペットのような廃棄物」の識別について、尋問を受けた嘉穂鞍手保健福祉環境事務所の県職員は、「安物はプラスチック」「(高級ではないものは)1色のもの」などと目視や肌ざわり、あるいは事業者への聞き取りで判断していたと答えた。
尋問で垣間見えた福岡県の廃棄物行政のずさんな実態。はたして、事業者が適格かどうかを判断する能力があるのか。審査を行う側の適格性が問われそうだ。
【山下 康太】
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