2024年12月24日( 火 )

2019年の政局を語る~山崎拓 元自民党副総裁(3)

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野党再編の可能性について

 ――立憲民主党が無所属の会の議員を個別に受け入れるにあたって、原発の即時停止と辺野古問題、それから憲法が入っていないのはなぜかなと思いましたが、3つぐらい条件を付けています。
 政策としてよく聞くのは、立憲民主党は、“原発ダメ”、“憲法は変えなくていい”というように「わかりやすい」。一方で国民民主党は、「よく分からない」。今度は日本維新の会と合流しようとしているようですが、そうした状況下で小沢一郎代表が目論んでいるのが野党再編です。この野党再編について山崎さんはどう見ておられますか。

山崎拓 元自民党副総裁

 山崎 それはもちろん可能性があると思います。今まで離合集散の繰り返しでしたから、再編はあり得ると思いますよ。そんなことは頻繁に行ってきたことですし、一番やったのは小沢(一郎)さんそのものですから。
しかし小選挙区制とは矛盾するわけです。小選挙区制というのは二大政党制のための制度導入ですから、それをやっておきながら少数党の分立をやるということは、制度とそぐわないですよ。小池希望の党と維新の会が一緒になっても第三勢力ができるだけで、第三勢力と第二勢力が結託しても、小選挙区制度を行っている間は多数が取れないから、そのこと自体意味がないのです。

 彼らの離合集散は、政党助成金を受け取ろうというだけのことです。財政基盤的にいうと、イージーゴーイングなやり方。要するに、国民の税金が、国会議員1人あたり4,000万円来ますから。国会議員が100人いたら40億円が受け取れるわけで、その40億円を山分けしようというだけの話。それ以外の狙いはないです。無所属の会が立憲民主党に入るのも、立憲民主党の助成金が増えるからです。政党助成金は政党に入らないともらえないですから。

 ――地元福岡に目を移すと、立憲民主党に入党すると報じられている野田国義参議院議員がいますが、これに対して国民民主党の県連組織が反発しています。

 山崎 国民民主党の県連なんて、事実上存在しないのではないか。看板は立っているかもしれないが、実体は不透明です。

 ――一方、自民党ですが、自民党県連所属の麻生太郎さんは一体何がしたいのかよくわかりません。北九州や福岡市など、いろいろなところの選挙に首を突っ込んでこられますが、何が狙いなのか……。

 山崎 彼は以前「県連会長になりたい」と言っていたんですよ。やはり福岡県の実力者になりたいのではないでしょうか。そうであれば県知事選に出れば良いと思いますが、今は出ても惨敗しますよ。

 彼は日本の大将ではなく、福岡の大将を希望しているように見えますね。私が彼だったら、日本の麻生なんだから、福岡の麻生になろうなんて思わない。わざわざ自分を矮小化することはしないと思います。だけど彼はもともとの血筋が炭鉱家だから、そちら(=福岡県)の大将になりたいのではないでしょうか。

沖縄基地問題について

 ――話は変わりますが、山崎さんは沖縄との縁が深いですよね。そこでお尋ねしますが、辺野古で土砂搬入が始まり、県知事選で示された民意が踏みにじられるかたちになっています。政権の沖縄の民意を踏みにじるようなやり方、沖縄が見向きもされないということに対してどう見ていらっしゃいますか。

 山崎 これはすでに確立された路線です。1998年以来の辺野古への普天間基地機能の移転については、橋本政権の時―僕が政調会長の時代ですが―3年半の任期の最後の時に決まったんです。それで僕は辺野古にへばりついて地元説得を行ったんですよ。そういう立場からすれば、辺野古の移転推進という前科を(私は)持っている。その路線を安倍総理は踏襲している。結局、鳩山(由紀夫)さんが失敗したことにあるんじゃないですか。「俺ならやってやる」ということだと思います。

 安倍総理は日米関係を重視すると言っておきながら、中国とも関係改善し、ロシアのプーチンとくっついたり、三方にいい顔をしようとしているが、外交上成り立たない構図です。三大勢力と皆近い関係に立って漁夫の利を得ようとするやり方は成功しないですよ。アメリカには、尖閣諸島を守ってもらう代償として、辺野古移設の早期実現をしようとしている。

 ――抑止力という言葉を政府はよく使いますが、この抑止力という言葉は非常に曖昧です。

 山崎 便利な言葉だから使っているんですよ。要するに日米同盟、日米安保体制が抑止力という意味なんです。正確にいうと「核抑止力」。日本は核をもたないから、アメリカの核でロシアと中国の核に対抗するということです。それが抑止力の本当の意味です。

 ――抑止力についてもう少しうかがいます。辺野古につくる滑走路は短いですよね。大型機が離発着できないですが、それで本当に抑止力になるのかなと思います。

 山崎 アメリカがそれでよければ何でもいいんですよ。要するにアメリカが納得して、日本のなかに基地を置いておく、一種の植民地統治における治外法権みたいなものですね。地位協定によって、実体的には日本の領土のなかにアメリカの領土があるのと同じような状態となっています。ですから滑走路が短かろうが長かろうが、アメリカはその地位を保全したいわけです。
実際に日本は在日駐留米軍経費のおよそ7割を負担しているんですが、残り3割をアメリカは出さなければならない。それでも財政的な面でアメリカは負担が苦しいため、ある程度在日米軍を引き上げる方向です。今のところ日本側と合意しているのは、沖縄全体にいる米兵19,000人のうち9,000人をとりあえずグアムに引き上げることです。残り10,000人を残す約束になっており、それを少しずつ実現しようとしています。普天間の辺野古移転と同時にそうなるでしょう。

 ――米兵がいなくなる見通しがあっても、辺野古はつくらなければいけないということですか?

 山崎 そういう約束ですから。アメリカは米兵はいなくても、軍事拠点だけはもっておきたいわけです。日本のなかにアメリカの領土があるともいえるわけで、このような日米関係を、日米同盟という名のもとに維持していきたいということがあるというわけです。

 安倍総理は日米安保条約の改定文をつくったのが祖父(岸信介)だからそれを尊重するわけです。岸信介がアメリカとの関係で安保条約を確固たるものにした―その路線を自分のDNAとして大事に考えているので、日米同盟堅持ありきで、それを維持するために、辺野古を提供しようとしているのですが、わざわざ海を埋め立てて、その費用はすべて日本が負担するんです。

(つづく)

<プロフィール>
山崎 拓

1936年生まれ。福岡県立修猷館高校、早稲田大学商学部卒。福岡県議会議員、衆議院議員(12期)。防衛庁長官、 建設大臣、自民党幹事長、同党副総裁などを歴任。近未来政治研究会最高顧問。柔道6段、囲碁5段。著書に『2010年日本実現』『憲法改正』など

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