枝野幸男立憲民主党元代表が10日、さいたま市内で講演し消費税減税派を「ポピュリズム」として、「減税をいう人はあきらめるか別の党をつくるか、どっちかだ」と発言したことが党内外で波紋を呼んでいるが、枝野氏は意に介さない姿勢のようだ。
SNSでは枝野氏発言に賛否の声
枝野氏は17日に自身のX(旧・twitter)において、自身の発言をめぐる立憲内部の声を紹介した産経新聞の報道を紹介し「さすがにS紙のあおり記事を信じる人は党内にいないと思いますが…」と投稿した。
枝野氏が紹介した記事は、15日夜に産経新聞ニュースで配信された「枝野氏の『分党発言』に立民党内で反発強まる 小沢氏『非常に傲慢』江田氏『言論封殺』」と題する記事でヤフーニュースでも取り上げられた。
XなどSNSでは、枝野氏の発言に対して賛否の声が上がっているが、本来、議論が活発に行われることは、むしろ歓迎すべきことのはずだ。
自民・公明両党からも減税を求める声が上がり、野党でも国民民主党、れいわ新選組、共産党、参政党などが減税を主張している。財務省前では「財務省解体デモ」が連日行われるなど、財政規律を重視して減税に否定的な財務省への批判が強まっている。
旧民主党政権の党分裂の再来
当然、枝野氏の発言に対する反発があがった。立憲の江田憲司元代表代行らでつくる勉強会「食料品の消費税ゼロ%を実現する会」は15日国会内で会合を開催した。江田氏は「大変残念な発言で、党是である多様性を尊重するという理念にも反しているし、政策論議を封殺しようというのは看過できない」と枝野氏の発言を批判した。
同日、小沢一郎氏も「意見の違うやつは党を出ていけということだ。そういうことは言ってはいけない」と枝野氏の発言を批判し「多くの仲間や党員、国民に対しても非常に傲慢(ごうまん)な印象を与える。みんなで議論しようという雰囲気のなかで、挑発的にケンカをふっかけたみたいになっている」と指摘した。
一方、枝野氏の発言を擁護する声もある。米山隆一衆議院議員はXで「有権者の話を聞き、皆が「日米開戦だ!鬼畜米英をやっつけてくれ!」と言っても、「冷静に考えて勝てません。寧ろぼろ負けして多くの人が命を落とす事になります」と説得するのが真っ当な政治家です」と投稿した。
国の財政を心配するのは当然のことで、賛否さまざまな声が上がるのは日本において民主主義が健全に機能している証拠だ。「別の党をつくればいい」という発言は政治家として些か狭量ではないか。
野田佳彦代表は「ポピュリズムとは思わない」と述べたうえで「物価高の問題や街頭でいただく声を踏まえた真剣な議論をしていただいている」と語った。元財務相でもあり財政規律を重視するとみられるが、考え方の相違は認めているようだ。
野田氏は、首相時代(民主党政権)、自公両党と税と社会保障の一体改革で合意した。2012年6月の国会では、小沢一郎氏や鳩山由紀夫氏らが、法案の採決に反対。小沢氏らは離党し、政権を失うきっかけになったが、産経の記事の趣旨は再びそうしたことになりかねないと指摘するものだ。
「まっとうな政治」「多様性」を掲げ一定の支持層を有する枝野氏であるが、国民各層が求める減税の声を「ポピュリスト=大衆迎合」と決めつけるようでは、立憲を「自民党に代わる受け皿」と国民は受け止めないだろう。
【近藤将勝】