2024年12月24日( 火 )

2019年の政局を語る~山崎拓 元自民党副総裁(4)

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再び沖縄を考える

 ――“日米同盟を深化させる”、という主張ばかりで、沖縄の民意は一顧だにされない。おかしいと思いますが・・・。

 山崎 今の政権は沖縄の民意を尊重するという立場をとっていませんから。

 ――山崎さんのような沖縄に寄り添う姿勢は今の政権にはまったくないように見受けられますが、何とかならないものですか。

 山崎 本当はやはり本土で責任をもって基地をつくらないといけないのです。安倍総理は、「日米安保体制を堅持したい」というのが基本的な立場であって、米軍基地の70%以上が集中する沖縄が犠牲になる。本当は、本土も犠牲にならなければならない話です。ただ、どこも引き受け手がないというのが現状です。アメリカは絶対に沖縄でなければいけないというわけではなく、日本のなかに拠点が残ればよいわけです。今は岩国市(山口県)にかなり集中しています。

 ――沖縄と政府の対立はこのままどんどん深くなる一方で、玉城デニー知事は、県民投票を2月に行うと言っています。

 山崎 今の政権の最大の弱点になると思います。県民投票が辺野古移設反対となれば、県民の意思は反政権ということになりますから、非常に困った立場になります。

 ――2月に沖縄の県民投票、春には統一地方選挙、夏には参議院選挙となります。一連の政治決戦は、どのように展開していくとみられていますか。

 山崎 統一地方選挙と参議院選挙とは関係はないとは言い切れませんが、直接的な影響はないですね。参議院選挙は国政選挙、地方選挙は地方選挙で独自にやっているわけですから。たとえば福岡でいえば、参議院選挙では自民、公明、立憲それぞれ1議席ずつとなる。地方選挙の結果、その構造が変わるかといったら変わらないでしょう。

安倍政治を考える

 ――(衆参)ダブル選挙という話も出ていますが。

 山崎 ないと思いますよ。できないと思います。安倍総理が解散権をもっていますが、「何のために解散するのか、何のためにやるのか」という大義名分がないと思います。今までは党内求心力を高めるため、3選のためにやってきたけれども、彼がもし4選を考えているとすれば、なかなか難しいことだと思います。4選となると党内で反乱が起こると思います。

 4選を考えていないとしたら―なぜ考えていないといえるかとすると、彼のレガシーとなりそうな最長不倒距離を、3期目を全うすれば実現するからです。全うできるかどうかということは、彼の体調とその間における国政選挙の勝ち負けなんですね。国政選挙の勝ち負けは参議院と衆議院とあって、両方一緒にやってそこで負けたら終わり。そして負けることは確実なんです。衆議院も参議院も数が減ることは間違いないでしょう。昨年10月の選挙も減るはずでしたが、小池(百合子)さんの“チョンボ”があって奇跡的に現状維持ができた感じになりました。しかし次回の場合は必ず数が減ります。衆参(ダブル選挙を)やったから、維持できるというわけではないですから。とくに参議院の場合は31のうち自民が29取って野党2でしたから。いうなれば31取って0にするという以外にないですが、野党もそれほどまで弱くないし、そんなことが実際起こるわけがない。むしろ野党は10議席以上取るでしょう。

 安倍総理のもう1つのレガシーは憲法改正。彼は憲法改正を2020年までにやると明言しました。来年の参議院選挙で3分の2を割ったらそれができなくなるわけですが、確実に3分の2は割ると思います。衆議院まで選挙をやって数が減ったら、責任問題になって辞めざるを得なくなる。そういう愚かなことはしないと思います。

 衆議院を解散するにあたり、参議院にない、大きな問題となり得るのは、「衆議院選挙もやれば、首班指名選挙が改めて行われる」ということです。解散して衆議院議員はいなくなり、選挙期間中は暫定内閣、選挙管理内閣が残ります。選挙が終わったら改めて総理大臣を選び直さなければならないですが、そうなると第二の加藤の乱が起きる可能性すらある。第二の加藤の乱が起こったとすると、安倍総理にはそれを鎮圧できたとしても、自民党は分裂しかねない。

(つづく)

<プロフィール>
山崎 拓

1936年生まれ。福岡県立修猷館高校、早稲田大学商学部卒。福岡県議会議員、衆議院議員(12期)。防衛庁長官、 建設大臣、自民党幹事長、同党副総裁などを歴任。近未来政治研究会最高顧問。柔道6段、囲碁5段。著書に『2010年日本実現』『憲法改正』など

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