2019年の政局を語る~山崎拓 元自民党副総裁(5)
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――第二の加藤の乱を起こしそうな人物は?
山崎 野党側は小沢(一郎)さんでしょう。田原総一朗さんが画策していますよ。自民党では、まあ……。
――年明けから国会が始まりますが、参議院選挙までの間に安倍政権が窮地に陥りそうな政治課題はありますか?
山崎 対ロシア交渉でしょう。もともと安倍総理の一番の課題は、拉致問題の解決だったはずです。安倍総理は対話と圧力のなかで、対話はしない。圧力一辺倒でいくということを言い続けてきましたが、トランプ大統領が直接北朝鮮と対話してしまったことで情勢が変わり、方針転換せざるを得なくなりました。
昨年の臨時国会の冒頭で安倍総理は、「北朝鮮と向き合っていく」と2回も3回も言いました。「向き合う」ということはどういう意味なのか、これほど曖昧な話はありません。彼はトランプの会談を真似して、北朝鮮と直接対話をする、トップ会談以外にないと言いました。だけどそれも言わなくなり、この頃は「向き合う」になっています。しかし、「海を隔ててじっと見ている」だけで、交渉はしていません。安倍総理の目指すレガシーの最たるものは、本当は拉致被害者を全員救済するということだったはずです。しかし彼はこれだけ長く総理を務めておきながら、北朝鮮問題は1ミリも前進しませんでした。もう完全にあきらめて、ロシアに向かっていったのでしょう。
ロシアとはこれまで24回も会談していますが、プーチン大統領との会談では手玉に取られています。北方4島の一括返還は歴代政権の基本線でしたが、彼はその方針を初めて変えました。そして河野太郎外務大臣は安倍路線に乗っかっているので、質問を無視するわけです。歯舞、色丹の返還、プラスアルファーで国後、択捉の共同事業。共同事業は“事業”であって“返還”ではないですから、得をするのはロシアだけで、日本はただお金をもっていくだけです。――河野外務大臣といえば、記者会見での「質問飛ばし」には呆れました。
山崎 (河野外務大臣が質問を無視したのは)2島返還だからです。彼の祖父(河野一郎)も4島一括返還を要求していました。河野外務大臣はそういう意味では苦しいと思いますが、安倍総理はプーチンに手玉に取られ交渉ができないので、河野外務大臣に振ったんです。成功しそうにないから、彼に責任を転嫁しようとしているんでしょう。
プーチンは歯舞、色丹は返還するが、国後、択捉は返さないと言っています。安保条約の適用範囲にされてはかなわないからです。ロシアを安心させるには安保条約に例外を設けるしかないですが、安保条約の再改正などと言ったら、日米関係はおかしなことになります。
――そうすると安倍政権は、かなり追い込まれた状況ですよね。
山崎 自分でそういう状況をつくっているわけですからね。拉致問題もそうで、国民を騙しているようなかたちになっているのです。
――もし安倍総理にお会いになったら、何を話されますか?
山崎 会わないですね。直接会っていうことは何もありません(笑)。
(了)
<プロフィール>
山崎 拓
1936年生まれ。福岡県立修猷館高校、早稲田大学商学部卒。福岡県議会議員、衆議院議員(12期)。防衛庁長官、 建設大臣、自民党幹事長、同党副総裁などを歴任。近未来政治研究会最高顧問。柔道6段、囲碁5段。著書に『2010年日本実現』『憲法改正』など関連キーワード
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