2024年12月23日( 月 )

米中貿易経済戦争の本質:5Gをめぐる主導権争い~HUAWEI(華為)に対する米国の対応から見える焦り(7)

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東洋学園大学教授 朱 建榮 氏

HUAWEIは簡単に潰れない

 ではHUAWEIは米側からの全面的掃討作戦でつぶれるのか。いくつかの解説を紹介する。

 12月17日付イギリス「フィナンシャル・タイムズ」(FT)紙の中文サイトに掲載されたルイス・ロカス記者の記事は、「極端に言って、アメリカの強引なやり方で欧米先進国におけるHUAWEIの発展が封じ込められても、その全地球規模の拡張を止めることができない」と述べた。

 マレーレアの中文紙『亜洲日報」の12月24日付記事(「為何難撼動 華為手握三大武器」)は、HUAWEIは、技術競争力、追随を許さないアフターサービスおよび価格的競争力の3つによって簡単に潰れないと解説。

 12月24日付香港『明報』は、HUAWEIは毛沢東の「農村から都市を包囲する」戦略を取り、国内市場のみならず、まず全世界の途上国市場を制覇し、次に世界制覇との手順を取っているのではと分析。

 HUAWEI自身の答えを見てみよう。その執行董事長が12月23日の記者会見で次のように説明した。

 A 2018年のHUAWEIの売上は初めて1,000億ドルを超えた。
 B すでに25カ国で5Gの契約を獲得し、ほかの競争相手を優にしのぐ。1万個以上の5G用通信施設が世界各地に発送中。
 C ビッグ500の企業のうち、200社以上がすでにHUAWEIをデジタル化事業のパートナーと選んだ。

 中国のある学者は僕の耳元でこのようにささやいたことがある。「10年前なら、アメリカの猛烈な圧力の前でHUAWEIが潰れる可能性はあったが、今はあり得ない」「アメリカの通信産業、5Gビジネスですら、HUAWEIの多くの技術特許に依存している。どうやってシャットアウトできるか」。

 HUAWEIは今日の米中間の、ハイテク主導権をめぐる争いの縮図でもある。

(つづく)

<プロフィール>
朱建榮(しゅ・けんえい)

1957年8月生まれ。中華人民共和国出身。81年華東師範大学卒業後、86年に来日。学習院大学で博士号を取得。東洋女子短期大学助教授などを経て96年から東洋学園大学教授。

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