2024年11月23日( 土 )

米中貿易経済戦争の本質:5Gをめぐる主導権争い~HUAWEI(華為)に対する米国の対応から見える焦り(8)

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東洋学園大学教授 朱 建榮 氏

米中間の10年「戦争」が始まった

 最後にまた、米国による執拗な締め付けに対する中国の著名学者の受け止め方と考えている対応策に関する注目記事を紹介する。

 対米慎重派の代表の時殷弘教授は、「今後5年間、国内改革を深化するとともに、新しい形態の韜光養晦と新しい形態の『有所作為』をするよりほかない」「戦略的な後退を決断し、国内経済と対外関係の両面で『大躍進』のような過ちを絶対犯すべきではない」と指摘し、「米当局が中国を世界から締め出し、門を閉じようとしているが、中国は全力を尽くしてもドアを閉めさせず、日本・韓国のみならず、欧州・オーストラリアとの関係を深めるべきだ」とも提言している。

 もう1人の常に自信・楽観派の金燦栄教授も「当面は慎重、長期的に楽観」との見方で今後10年間の対米関係と戦略を次のように展望した。

 A、習主席は、今回の中米貿易戦は「遭遇戦」だと語った。中国は今後、それを「陣地戦」に変えていくだろう。
 B、未来10年間の中米関係は「7割競争、3割協力」の構図になる。新冷戦や軍事衝突を絶対避ける。
 C、十年間過ちを犯さず、コツコツとやっていけば、実力と影響力の両面で中国は(米国に接近する)一段上に上がるだろう。そうなれば、米国は中国を抑え込もうとしても無理と気づき、あきらめるだろう。「もしかするとその時点で逆に両者がある種の協力パートナーになるかもしれない」 

 米側は今後、だれが政権を担当しても、中国に揺さぶりをかけていく。とどのつまり、イデオロギーの相違なんて口実だ。中国がかつての日本と同じように失速し、米国にとって「無害動物」になれば、米側も追及の手を緩めるだろう。だって、中国とうり二つの社会主義体制を取るベトナムとは、米国は何もイデオロギーの相違を言わずに、中国けん制用のサポートを次々とやっているではないか。

 一方の中国は歯を食いしばってまず10年以内に経済・科学技術力の面で米国に追い付くことを最優先目標とするだろう。そうなればG2の世界が現実になると見る。

 どっちの夢が現実になるだろう。

 それに対して、日本はどうするか。はたして10年スパンの眼力で習近平主席がいう「百年未有之大變局」を見ているのだろうか。

(了)

<プロフィール>
朱建榮(しゅ・けんえい)

1957年8月生まれ。中華人民共和国出身。81年華東師範大学卒業後、86年に来日。学習院大学で博士号を取得。東洋女子短期大学助教授などを経て96年から東洋学園大学教授。

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