2024年11月25日( 月 )

中国資本に売却される大塚家具の新体制~大塚久美子社長が起用した取締役を一掃(後)

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陳氏は父・大塚勝久氏との和解を提案

 陳海波氏は朝日新聞(2月23日付朝刊)のインタビューで、「父娘和解」を提案した。それは、支援者というより、新オーナーとしての発言だった。

〈陳氏は、創業家が対立したままでは大塚家具のブランド価値を毀損するとの考えを示し、「どちらも高級家具が売りで、客層も同じ。家族で客を奪い合っても仕方がない」と指摘。早期に父娘の和解を実現させ、勝久氏の支援を受けながら再建を加速させたい考えを示した。「大塚家具の強みは(勝久氏が築いた)コンサルティング営業にある。そのノウハウを生かして海外に販路を広げるべきだ」とも述べた。〉

 人事にも言及した。

〈久美子氏の処遇については「赤字が継続すれば続投できなくなる。今年は最低でもトントンにする必要がある」(中略)大塚久美子社長の続投は当面認める方針だが、他の取締役については、「3年間の実績を見れば、アドバイザーとして機能していない」〉

 陳氏が大塚家具の再建に絶対に必要と考えているのが、久美子氏の父、勝久氏の経営力である。それが「父娘和解」の提案になった。勝久氏を大塚家具に戻すために、勝久氏の追放を支持した取締役たちの一掃を求めたということだ。

久美子氏は公の場で、父・勝久氏との和解を表明

 大塚久美子社長は3月4日、ハイランズの陳海波社長と東京都内の日本外国特派員協会で記者会見を開き、2月までにまとめた業務提携・資本増強について説明した。
 大塚社長は「守りから攻めに打って出る体制が整った。日本から一歩生み出す」と述べた。陳社長は「(ハイラインズの)役員を大塚家具に派遣する。日本だけでなく、中国の富裕層取り込みも目指す」と狙いを語った。
 日本経済新聞(3月5日付朝刊)によると、会見の意図はこれだ。

〈大塚社長は、家具販売振興を目的とする団体の設立を検討していることも明かした。「価値観を共有できるメーカーや販売会社で作れないか考えている。その団体には父にも参加してほしいので、声をかけたい」と話した。勝久氏が設立した同業の匠大塚との協業について問われると、「経済合理性の観点に応じて検討する」と述べるにとどめた。〉

 久美子氏は公の場で、かつて経営権を争った実父の勝久元会長に協力を求めた。久美子氏の唐突な父親との和解表明は、陳氏の意向によるものであることはいうまでもない。

中国の富裕層に大塚家具の高級家具は歓迎される

 大塚家具は3月11日、現在の取締役7人のうち5人を入れ替える人事を発表。久美子氏が外部から連れてきた取締役5人は退任する。大塚家具を買収して、新しいオーナーになる陳海波氏のシナリオ通りにことは運んだ。

 それでは、陳氏の狙いはどこにあるのか。中国の家具販売大手、居然之家(イージーホーム)につなぐことにある。前出の朝日新聞とのインタビューで、イージーホームに代わり出資を募った経緯を明らかにしている。

 〈陳氏によると、当初の資本支援策はイージーホームが約30億円の第三者割当増資に応じ、出資比率を50%未満にとどめたうえで、さらに約30億円の現金を貸し付けるという計画だった。ところが、同社は上海証券取引所への上場に向けた審査中で、大塚家具への出資によって財務状況が変わると再審査が必要になり、上場が先送りされる可能性があった。〉

 そのため、陳氏が代わりに出資をとりまとめたというわけだ。こうも語っている。

 〈陳氏によると、イージーホームは上場後、今回の資本支援策で新たな発行される大塚家具株の一部を引き取る可能性がある。〉

 大塚家具を買収する本尊はイージーホームである。中国の富裕層に大塚家具の高級家具の人気が高いことから、大塚家具を取り込むことを狙った。

 陳氏の大塚家具の再建策はこうだ。インターネット販売や、イージーホームの店舗を通じて、3年後をめどに大塚家具の中国国内の売上高で200億円を目指すというものである。

 劇場型親娘喧嘩から4年。大塚家具は中国資本に呑み込まれることになった。

(了)

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