【伝統ある健康素材~大豆】古くから食される伝統素材から機能性素材としての評価高まる
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豆腐や納豆など、古くから我が国の食生活を支えてきた大豆。昨今は高たんぱく・低カロリーのる健康食材として、さまざまな機能性のエビデンスが解明されており、一般食品だけでなく、機能性表示食品としても公表されている。大豆は今、伝統食材に加え、ファンクショナルフーズとしても大きな脚光を浴びている。
摂取量は年々増加
厚生労働省が発表している「平成29年国民健康・栄養調査」によると、大豆を含む「豆類」の摂取量は1日当たり平均で62.8g。5年前の平成24年の調査では同56.6gで、年々増加傾向にあり、年齢別では高齢につれ摂取量が高い傾向にある。厚労省が推進する、2003年に国民の健康増進の推進に関する基本的な方向や目標を定めた「健康日本21(第一次)」では、1日摂取量100gを推奨しており、その数値には届いていないものの、着実に伸び続けている。
大豆の歴史・由来について(公財)日本豆類協会によると、日本で食されるようになったのは弥生時代からだといい、中国で米、麦、粟、黍、稗などの穀類の1つとして朝鮮半島を通じて日本に伝わったという。当初は煮豆や炒り豆として食され、奈良時代から味噌や醤油の前身となる穀醤(こくびしお)として利用するようになり、平安時代から豆腐や納豆などの食品原料として使われるようになった。
栽培・生産については、鎌倉時代から行われているが、消費量の大半が米国、ブラジル、パラグアイといった海外からの輸入品で、国内自給率は3~4%程度と非常に低い。また利用比率について、大豆の8割以上は製油用途で残り2割が一般食品や健康食品の原料用途として使われている。
伸長する豆乳と納豆、機能性表示食品も続々登場
大豆は味噌、醤油、納豆、豆腐、煮豆、油揚げ、豆乳、各種惣菜、サプリメントなど、さまざまな用途で使われているが、一般食品のカテゴリーで近年伸長しているのが納豆と豆乳。
今年2月に全国納豆協同組合連合会が発表した18年の納豆の市場規模(家庭向け末端市場の金額)は、前年比8%増の2,497億円。納豆の消費金額は、02年以降減少傾向にあったが、14年から年々回復し、18年は過去20年で最高の数字を更新した。原料の大豆を納豆に加工した生産量は30.8万t。1世帯あたりの消費金額は同7%増の4,234円で、全国1位は盛岡市の6,631円。
豆乳については納豆以上に拡大している。日本豆乳協会が発表した18年の豆乳生産量は、前年比7%増の36万2,794㎘で、8年連続で過去最高を更新した。10年前の08年が16万2,979㎘だったことから、10年間でおよそ倍増したことになる。
生産率50%以上の調製豆乳が堅調で、 無調整豆乳が8%増の9万7,385㎘、果汁入り豆乳が3%増の1万5,635㎘と増加したほか、昨夏の豆乳アイスブームにより、そのほかの豆乳製品が14%増の5万9,163㎘と大きく伸長している。
このほか、健康食品素材としても採用が進んでいる。アミノ酸バランスに優れたタンパク質のほか、イソフラボン、食物繊維などが豊富に含まれており、大豆の消費量が少ない若年層向けに低糖質、グルテンフリーを訴求したシリアルバーやラテなどの飲料といった商品のほか、15年に(株)サラダコスモが販売する生鮮野菜『大豆イソフラボン子大豆もやし』が、科学的根拠を基に商品パッケージに機能性を表示できる「機能性表示食品」として初めて届出・公表した。
大豆イソフラボンを関与成分に骨の健康に役立つことを訴求できることで販売が好調であることや、同様の訴求でフジッコ(株)、イオントップバリュ(株)、(株)ファンケル、アサヒグループ食品(株)、(株)味覚糖、(株)東洋新薬、四国化工機(株)など、大手を始め健康食品受託製造や異業種企業も機能性表示食品として公表されている。
機能性表示食品ではイソフラボン以外にも、大豆に含まれる「ホスファチジルセリン(PS)」を関与成分に、臨床試験により認知機能に有効な成分があるとして、(株)ネイチャーラボ、(株)ビーエイチエヌ、日油(株)が、「中高年の記憶力をサポート」を訴求する機能性表示食品として届出・公表されている。
さまざまな有効性が明らかに
機能性表示食品や健康食品の商品開発・販売が広がっていることで大豆の機能性成分の解明が進んでいる。近年は大豆イソフラボンに含まれるダイゼインが腸内細菌により代謝されることで産生する「エクオール」が美容や糖・脂質代謝に関する機能性が期待できることが注目されている。
大豆イソフラボンの研究開発や原料供給のリーディングカンパニーであるニチモウバイオティックス(株)では、イソフラボンのなかでも、同社が研究開発しているアグリコン型イソフラボン発酵大豆胚芽抽出物の摂取が配糖体イソフラボン大豆抽出物(SGE)に比べ、エクオールの代謝能をより促進することを確認したとする論文を発表したほか、女性の更年期や妊娠対策についての有用性や加齢性筋減弱症、子宮内膜症への有効性に関する研究を発表している。
このほか同社が開発している大豆を有効利用するための研究過程で誕生した麹菌発酵大豆培養物についてもアレルギー対策への機能性研究成果が発表されていることなど、これまで知られなかった、大豆のさまざまな機能性があることがわかってきた。大豆は伝統と栄養価と安心・安全な食材から、健康に役立つ機能性素材としての評価はさらに高まっていくと思われる。
【小山 仁】
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