激変する情報通信業界でチャレンジを続ける 九電グループを代表するイノベーション企業(2)
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(株)QTnet 代表取締役社長 岩崎 和人 氏
業界の激変に対応する新たな領域への挑戦
――情報通信の世界は、技術の進歩・発展のスピードがとてつもなく速いです。この先、「5G(第5世代移動通信システム)」などの新たなシステムが出てくると、またガラッと変わってくるのではないでしょうか。
岩崎 おっしゃるように、この世界では次々と新たなものが生まれ、既存の技術やシステム、そしてビジネスモデルなどが次から次へと塗り替えられていくような世界です。
弊社はもともと、たとえば光ファイバーを張りめぐらせて、それをお客さまに使っていただくことで対価をいただくという、いわば情報通信の“道路”をつくるインフラビジネスを行ってきた会社です。この領域は九電グループの得意とするところであり、弊社でも創業当初は、このインフラビジネスでのサービスを提供していました。ですが業界では、我々が一所懸命つくった“道路”を利用しながら、そのなかで収益を上げるビジネスモデル―たとえばAmazonやFacebook、YouTube、最近ではメルカリなどが躍進しています。そのため弊社でも現在、インフラビジネスだけでない、新たな領域でのビジネスモデルを模索しているところです。
最近では今年4月1日付で、(株)コアラ(福岡市)というウェブ系の会社と、(株)ネットワーク応用技術研究所(福岡市、略称:NAL)というネットワーク系システム開発の会社を子会社化しました。弊社のネットワークインフラを中心とした経営基盤と、コアラが培ってきたコンテンツ制作・デジタルマーケティングノウハウ、またNALが培ってきたソフトウェアを中心とした研究開発ノウハウなどを融合することで、それぞれシナジー効果を発揮し、デジタルプロモーションや観光系ウェブ開発、IoT・AIプラットフォーム開発など、お客さまへの新たな価値提供に向けた取り組みを進めていきます。
――これからの業界の大激変に対応していくために、社内に企画戦略部隊などのセクションを設けられているのでしょうか。
岩崎 技術だけでなく、サービスや営業の開発―いわゆる「FS(フィジビリティスタディ/事業可能性の検証)」については、弊社でも以前から取り組んでいました。ですが最近はとくにスピードを上げていこうということで、今年4月1日から「YOKAプロ部」という専属のプロジェクト部署を立ち上げ、そこに社内で公募を行って営業や技術などの事業部の垣根を越えて人材を集めています。このYOKAプロ部では、1年間で50件の新規事業の検討を目標としており、50件のうち何件が事業化に成功するかはわかりませんが、「とにかくチャレンジしてみろ」「よかよか、やってみろ」ということで、YOKAプロ部という部署名にしています。
ただし、“千三つ”というように、新規事業がそうそう“当たる”ことはありません。ですが、先ほどの話のようにITの世界は競争が激しいですから、現在のビジネスモデルのままで5年先、10年先に通用するかというと、甚だ疑問です。やはりどうしても、新たに稼ぐ領域を自らプロデュースしていかねばなりません。
では、「どのような領域がいいのか?」というと、その候補はたくさんあります。話題性として面白いのは「eスポーツ」ですね。eスポーツについては検討も進めていて、「案の1つとして将来的にアリーナまでつくろうか」といった話も出ています。ただし、eスポーツの市場自体が、毎年2~3割伸びているとはいえ、今はまだ絶対値が小さいですから、今後どう育てていくかというところから考えなければなりません。5月28日には福岡を拠点とするプロeスポーツチーム「Sengoku Gaming」とスポンサー契約を締結しましたが、弊社としては九州からeスポーツを盛り上げていくとともに、eスポーツ事業への参入などについての検討を進めていくことを考えています。
また、世の中のバズワードからいえば、「AI(人工知能)」や「ビッグデータ」ですが、たとえばAIについても、自社で直接開発できるリソースはありませんので、先ほどのコアラやNALのように、AIに関する技術やノウハウをお持ちの会社に出資して、コラボするようなかたちで一緒にやらせてもらうことなどを考えています。
その1つとして、今年4月にはビッグデータ解析を用いたAI事業を展開するゼネリックソリューション(株)(東京都渋谷区)に出資しました。これは弊社のノウハウを活用した事業支援を行うとともに、ゼネリックソリューションのビッグデータ解析技術・ノウハウを生かして、協業シナジーを生み出していくことが狙いです。
また、6月3日からは、九州工業大学(九工大)と九工大生協と協力して、九工大の戸畑キャンパス内でAI・画像認識を使った“無人店舗”の実証実験を始めました。この実証実験で得られたデータやノウハウなどは、社会実装を目指してさらなる研究・開発を進めていくとともに、弊社でもお客さまへの新たな価値創造の取り組みのために、役立てていきたいと考えています。
(つづく)
【文・構成:坂田 憲治】<COMPANY INFORMATION>
代 表:岩崎 和人
所在地:福岡市中央区天神1-12-20
設 立:1987年7月
資本金:220億2,000万円
売上高:(19/3)約575億円<プロフィール>
岩崎 和人(いわさき・かずと)
九州大学大学院工学研究科情報工学専攻課程修了後、81年4月に九州電力(株)に入社。90~94年に現QTNetへ出向するなど情報通信部門を歩み、2010年6月に電子通信部長、11年7月に情報通信本部部長、14年6月に執行役員情報通信本部長を経て、16年6月に(株)QTnetの代表取締役社長に就任した。関連記事
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