日本の対韓輸出制限で急激に注目が集まっている半導体素材
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日韓ビジネスコンサルタント 劉 明鎬 氏
日本政府が今月の4日から半導体製造に必須である化学製品3品目の対韓輸出制限を発動したことにより、韓国政府をはじめ、産業界に大きな衝撃が走っている。この対応策をめぐって、韓国政府は腐心しているが、これといった対応策は見つかっていない。
経済を知らない政治界では、強硬な対応を主張する一方、経済界では冷静なスタンスが多く、今回の問題はあくまでも政治絡みの問題であるため、両国の政治的な妥協によって、問題が解決されることが望まれている。
日本のことをよく知っている一部の人は、今回の件をとても深刻に受け止めている。しかし、その反面、参議院選挙が終われば、米国の仲裁などによって、事態が収拾に向かうだろうとしている。
今回の日本の対韓輸出制限は、韓国で毎日マスコミに取り上げられ、対日感情が悪化しているので、筆者としては今後の日韓関係が懸念される。一方、今回の件で、素材などが半導体製造において、どれほど大事であるかを教えてくれたような気がする。今回は半導体製造の原型ともいえるシリコンウェーハについて取り上げてみよう。
半導体は産業のコメと呼ばれているほど、私たちの日常生活と密接に関わっている。スマホを始め、テレビ、自動車、ノートパソコン、家電製品、クレジットカードなど、半導体なしでは実現できない製品を上げるとしたら、いくらでもある。そのような半導体の製造に使われる基盤素材は何かといえば、シリコンウェーハである。
シリコンウェアから半導体の製造はスタートする。ニュースなどでよく目にする銀色の円盤がシリコンウェーハで、この円盤のなかに印刷・撮影技術を使って、回路を書き込んでいき、半導体が出来上がる。
ほとんどのシリコンウェーハの材料は、砂から採取したケイ素、すなわちシリコンでできている。 ウェーハの製造に使用されるシリコンは、純度99.999999999%以上で、非常に純度の高いシリコンでできている。9が11個も並ぶので、別名でイレブンナインと呼ばれたりもする。 シリコンは地球上に豊富に存在しているため、安定的な供給が可能で 、毒性もないので、環境にも優しい材料である。ところが、シリコンウェーハが薄ければ薄いほど製造コストは安くなり、またウェーハのサイズが大きければ大きいほど、1枚のウェーハからたくさんの半導体チップがつくられるので、シリコンウェーハの大口径化の競争が繰り広げられている。
シリコンウェーハのサイズは20mm(0.75インチ)からスタートし、現在は、300mm(12インチ)のシリコンウェーハが主流となっており、450mm(18インチ)のシリコンウェーハを開発する動きも出てきている。しかし、シリコンウェーハのサイズが大きくなればなるほど、半導体メーカーの初期投資は大きくなり、財政的な負担は重くなる。なぜかというと、サイズが変わると、既存の製造装置はそのまま使えず、装置を始め、搬送ロボットなど、そのサイズに合わせて新しい製造装置に入れ替えるため、投資額が増えていくからだ。
巨額の投資が必要であるため、半導体製造に簡単に参入できないので、ファウンドリー(受託専業企業)ビジネスが繁盛するようになるわけだ。ところが、第4次産業革命などで、世界的に自動走行Iot、AIなどの進展を背景に、半導体需要の大きな伸びが予想されている。半導体製造に欠かせないシリコンウェーハの需要も伸び続けている。ここ数年はシリコンウェーハの需要が供給を上回っていた。
それでは、シリコンウェーハはどのようにつくられているだろうか。原料のシリコンを高温の熱で溶かし、高純度のシリコン溶液をつくり、これを結晶成長させて、シリコン円筒をつくる。このシリコン円筒をインゴットという。ウェーハをつくるためには、この円筒形のインゴットをダイアモンドののこぎりで、均一な厚みに、切る作業が必要である。
ウェーハは薄ければ薄いほど、製造コストが安くなり、口径が大きければ大きいほど、一回に生産できる半導体チップの数が増加するので、ウェーハはだんだん薄く、サイズが大きくなる傾向がある。薄く切られたウェーハの表面はまだきれいになっていないため、研磨液と研磨装置を使って磨きをかける。このような過程を経て、一枚のウェーハが誕生するようになる。
このウェーハは半導体のそれぞれの製造装置に移動されていき、そこに露光装置そのほかで回路を焼き付けていくことにより、半導体が完成する。今まで半導体の原型であるシリコンウェーハがどのようなものなのかを見てきたが、市場はどのようになっているだろうか。
半導体用シリコンウェーハの市場は、日本企業が世界シェアの60%以上を握っている。信越化学工業の子会社である信越半導体が世界シェア30%で、世界トップ企業となっており、それについでSUMCOが世界シェア27%で、世界第2位となっている。
日本の会社以外には、世界3位のドイツのシルトロニック、世界4位の台湾のグロバルウェーハズ、世界5位の韓国のSKシルトロンのトップ5社が世界市場の85%を占めている。
最近中国の企業も半導体を内製するためにシリコンウェーハの製造に力を入れており、急成長している。
このような中、シリコンウェーハの出荷量は5年連続最高値を更新し続けている。18年の年間売上高は113億8千万ドルで、17年の87億8千万ドルに比べて、約31%も成長している。しかし、今年はメモリ市場の価格下落、米中貿易戦争の影響などで、市場はピークから下り坂に向かっている。
最後に今後の予想だが、今後、さまざまなモノがインターネットにつながっていくことで、データ処理を行うメモリーやロジック、各種センサー、それから省電力化に必要なパワー半導体など、半導体の需要が増加していくことは間違いない。そうなると、シリコンウェーハの需要も増加するのは必至である。自動車、医療、ウェアラブル、データセンターなど、半導体は日常生活を支える重要なキーデバイスとなっていくだろう。
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