2024年12月19日( 木 )

AIで市場拡大へ 音声認識市場をつくったアドバンスト・メディア~話した声を文字にする音声認識、AI活用で高度・高精度に(1)

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(株)アドバンスト・メディア 代表取締役会長兼社長 鈴木 清幸 氏

 人が話した声を文字に変える音声認識システム市場は、2023年には1,010億円になると予想されている((株)日本能率協会総合研究所調べ)。音声認識の売上首位でシェアの約6割を占める(株)アドバンスト・メディア代表取締役会長兼社長・鈴木清幸氏に、新しい市場を生み出した経緯とビジネス利用の現状、音声認識が目指す未来の話を聞いた。

コールセンターで音声認識AmiVoiceを利用

22年前、音声認識市場が生まれる前に創業

代表取締役会長兼社長・鈴木清幸氏

 近年のスマートフォンの普及などで身近になったのが、人が話した言葉を文字に変える音声認識技術だ。音声認識アプリケーションとサービスの売上高国内首位の(株)アドバンスト・メディア代表取締役会長兼社長・鈴木清幸氏は、市場がないところから、リーディングカンパニーとして音声認識の新しい市場をつくってきたと話す。

 鈴木氏は、1997年に音声認識ベンチャーのアドバンスト・メディアを創業した。当時は、音声認識のことを知る人も少ないなかで、米国のInteractive Systems, Inc.との連携により日本語音声認識エンジンを開発した。そして、音声認識システムやアプリの開発を進めるとともに「音声認識が受け入れられて、使われる世の中」にするためには何が必要かを常に考えていた。

ビジネス利用のニーズをつかんで開発

 創業当時から行ってきたのは、各企業のビジネスモデルに合わせて音声認識システムをオーダーメイドでつくる「ソリューション事業」だ。多くの企業のニーズをくむなかで、どんな音声認識システムやアプリが世の中に必要とされているかというノウハウをつかんだ。そして、多くの企業にとって使いやすい音声認識システムやアプリを開発した。

 今では、音声認識システムやアプリを販売する「プロダクト事業」や、サービス利用として提供する「サービス事業」が売上の6~7割を占めている。

国内市場首位で約6割のシェア

 アドバンスト・メディアの2018年度の連結売上は約43億円、営業利益は約7億円であった。これらは開示の計画値より大きく、その計画値に基づき予測したITR Market Viewの音声認識のベンダー別売上金額シェア予測値56.5%である。その理由は何か。まず、22年間事業を行うなかで、医療、議事録、コールセンター、モバイル、製造・流通などの7つのビジネス分野で音声認識の市場を先がけてつくってきたことが大きい。

 コールセンター向け音声認識システムやアプリとサービスは、269社で利用されている。また、医療分野では1万1,819施設で利用されており、同社がほとんどのシェアを握っている。議会や会議の議事録分野でも327施設で導入され、市場の約8割のシェアがあるという。

 音声認識ベンチャーとして新しい市場をつくり出すために、一時的な損失があっても未来を買う「攻め」の先行投資などを積極的に行ってきた。すぐに手が届く目の前の利益を求めていては、大きく成長することはできないビジネスだからだ。

 近年では、11年に未来を買う施策を行い、13年に従来の4事業部が売上拡大に転ずる変革を行った。14年に従来の4事業部に6つの事業体を新たに付け加え10事業体とし、市場開拓の分野を広げた。これらにより、15年から従来の4つの事業部の増収増益が始まった。そして、17年からは、とくに11年の施策の効果により、急激に利益を増大することができアドバンスト・メディアは増収増益をしている。

 鈴木氏が企業の成長のために注目しているのは、音声認識技術の研究開発への投資だけにとどまらない。技術者の開発力から生まれる音声認識アプリとサービスは、開発する人ばかりでなく関わる人々の能力やノウハウがそのまま製品に表れる。企業の成長は、会社をつくっている人が成長すること、人が成長することで会社の業績が上がり大きく伸びると鈴木氏は話す。

(つづく)
【石井 ゆかり】

<COMPANY INFORMATION>
代 表:鈴木 清幸
所在地:東京都豊島区東池袋3-1-1
設 立:1997年12月
資本金:68億6,841万円
売上高:(19/3連結)42億5,619万円

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