2024年12月19日( 木 )

AIで市場拡大へ 音声認識市場をつくったアドバンスト・メディア~話した声を文字にする音声認識、AI活用で高度・高精度に(3)

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コールセンターの顧客対応力を高める

代表取締役会長兼社長・鈴木清幸氏

 コールセンターでは、「声の見える化」に音声認識システムが使われている。顧客とコールセンターのオペレーターが会話した声を、リアルタイムで文字にして記録している。声を録音すると、あとから会話を聞き直す時に聞きたい部分を探すのは難しい。だが、文字になっていると、「話した言葉」で会話を検索できるようになる。

 たとえば、ある大手通販会社では、20人のオペレーターを1人のスーパーバイザーが管理・支援・指導している。オペレーターが困った時にサポートする、スーパーバイザーの役割は重大だ。これまでは、コールセンターのチーム内で同時に問題が起こった時に、どのオペレーターの問題を優先して対応しなければいけないかがわかりにくかった。だから、オペレーターが手を挙げた順番に、スーパーバイザーが対応してきた。

 しかし、音声認識システムを使うことで、それぞれのオペレーターと顧客が話している会話を、スーパーバイザーが自分の画面からリアルタイムで見ることができるようになった。しかも、AI機能により支援の必要度や緊急度などの高い順に色分けで知らせてくれるので、どのオペレーターの対応を優先したら良いかがわかるようになり、迅速で的確な支援ができたため、利用していないチームに比べて成約率が向上した実績がある。

 聖徳太子は同時に8人もの話を聞き、うまく指導できたといわれているが、一般の人は2人が同時に話しただけでも聞き分けられないものだ。だが、音声認識システムを使うことで、20人の声を「文字」で聞き、支援することができる。AIをうまく使って、今までの人の能力を超えること、すなわち、AIによるスーパーマン化(AISH:AI Super Humanizing,アイッシュ)がこれからの時代だと鈴木氏は話す。

全国155自治体の議事録作成で利用

 議会の本会議・予算委員会や一般企業の会議などで話された声から議事録をつくる音声認識システムやアプリとサービスは、今では、全国155の地方自治体、10のテレビ局、新聞社などのメディア、151の民間企業などで使われている。

外国語のコミュニケーションも声で翻訳

 英語や中国語などの外国語のコミュニケーションにも、音声認識の技術を役立てている。日本語で話した言葉を外国人に伝えたい時に、スマートフォンやタブレットからAIが声を認識して自動で翻訳し、外国語の声で伝える「音声翻訳」の機能だ。外国人の言葉を日本語に翻訳して聞くこともできるため、お互いに言葉がわからなくても、音声翻訳を通して話ができる。

 現在4カ国語に対応しており、公共の場でアナウンスできる音声翻訳として使われている。また、スマートフォンなどを使って、外国語に翻訳した言葉をリアルタイムに組織で共有して確認できるため、正確にコミュニケーションを取りやすい。

専門分野特化型が強み

 Googleなどが、音声検索で「どの分野でも使える」汎用音声認識を使っているのに対して、アドバンスト・メディアはビジネスの専門分野ごとに特化することで、精度の高い音声認識を開発している。これまでビジネス向けの精度の高い音声認識ができるように、アドバスト・メディアはさまざまな工夫を重ねてきた。

 音声認識は、マイクから読み込んだ声を分析して、過去の音声データと照らし合わせて、どの言葉かを判断して文字に表す。そのため、ビジネス分野ごとに使われる言葉を記録した「発音辞書」を充実させて、いかに正確な言葉を判断できるかが、音声認識の精度を大きく変える。そのため、医療やコールセンターなど分野ごとに20年以上音声データを集めて、認識精度アップのためのノウハウの蓄積を含め、各分野に特化した音声認識エンジン、音声認識アプリケーションやサービスを開発してきたことが強みになっている。

(つづく)
【石井 ゆかり】

<COMPANY INFORMATION>
代 表:鈴木 清幸
所在地:東京都豊島区東池袋3-1-1
設 立:1997年12月
資本金:68億6,841万円
売上高:(19/3連結)42億5,619万円

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