2024年07月24日( 水 )

【NEXT(次世代)カンパニー】AI点検ロボットで インフラ点検業界に挑む(中)

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オングリット(株)

オングリットが北九州工業高等専門学校と共同開発した高所用点検ロボット

構造物密着型ドローンを共同開発

 オングリットのAI画像解析システムは、道路構造物におけるコンクリートのヒビ割れ、損傷、ボルトの緩みなどを検知する。実際の道路構造物の損傷画像などを「教師データ」として学習させ、解析を重ねることで、より正確な解析が可能になる。たとえば、橋梁点検には、26種類の点検項目があるが、AIが画像を診断し、種類ごとに分類した分析ができる。

 点検作業は、AIを搭載した「点検ロボット」が行う。同社の点検ロボットは、機構的にはドローンと同じだが、ローター(プロペラ)を使って、空中を浮遊するのではなく、点検対象となる道路構造物に貼り付き、画像を撮影する。トンネルの天井にもしっかり貼り付いて画像撮影ができるため、浮遊型ドローンに比べてより精細な撮影が可能、より正確な画像解析ができる。

 ドローンといえば浮遊型をイメージしがちだが、都市部では飛行禁止区域が多くほとんど使用できないなど制約が多い。密着型点検ロボットであれば市街地にある街灯などにも適用でき、その使用範囲は一気に広がる。ロボット開発には、北九州工業高等専門学校の協力を得た。「街灯も点検できるロボットは、今のところウチが日本初」(歩取締役)という。今後、障害物を避ける機能を追加する予定で、トンネル点検などにも投入したい考えだ。

 ただ、AI点検ロボットによる道路構造物の点検は原則的には可能だが、国土交通省の補助金が含まれる発注案件では実施することができない。「近接目視による点検が基本」が運用ルールになっているからだ。現在のところ、各自治体が行っているトライアル発注制度を活用し、フィールドテストや点検業務を行っている。高所などを近接目視するためには作業車が必要になるが、点検1件あたりのコストが高くなる。当然、点検できる全体の件数は少なくなる。

 歩取締役によれば、同社のAI点検ロボットを使えば、作業車を使う現在の点検に比べ、「作業時間で4倍早くなる」という。コストも「1件あたり9万円ほど」(歩取締役)下がる。作業車を使わないため、CO2の削減にもなる。

 「単価の低い街灯の点検などは、どこのコンサルもやりたがりません。まともに目視点検していると儲からないからです。ただ、逆に弊社のような会社にとってはノウハウを生かせる魅力的な点検対象です。まずは誰も手を出さないニッチなところで実績を積み重ねていきたい」(歩取締役)と力を込める。当面は、九州、山口地域をマーケットに営業活動を行っていき、それ以外の地域については、ほかの点検会社との代理店契約による業務展開を模索している。

オングリットのAIシステムが道路標識のボルト(15本)をチェックした画面。問題のないボルトは「Fine」、緩みなどがあるボルトは「Error」と表示される。点検に要する所要時間は数分
「Error」表示されたボルトの拡大画面。風による振動で1本かなり緩んでいた

(つづく)
【大石 恭正】

<COMPANY INFORMATION>
代 表:森川 春菜
所在地:福岡市中央区大名2-6-11
仮オフィス:福岡市博多区綱場町2-2
本 店:北九州市若松区ひびきの1-8
設 立:2018年3月
資本金:100万円(連結200万円)
TEL:050-3568-3248
URL:https://www.on-grit.com

<記者プロフィール>
大石 恭正(おおいし・やすまさ)

立教大学法学部を卒業後、業界紙記者などを経て、フリーランス・ライターとして活動中。1974年高知県生まれ。
Email:duabmira54@gmail.com

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