【ネクスト(次世代)カンパニー】「のるーと」でバス事業の新たなビジネスモデルを(後)
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ネクスト・モビリティ(株) 代表取締役社長COO 田中 昭彦 氏
代表取締役副社長CSO 藤岡 健裕 氏ライドシェアを取り入れないと将来はない
――「のるーと」を海外輸出する構想があるそうだが・・・。
田中 西鉄は、デベロッパーとして、東南アジアの住宅開発などを手がけている。郊外での住宅開発の場合、交通手段が問題になることがある。交通のオペレーションは基本的に現地法人にお願いしているが、我々が「のるーと」を通じて、優秀なオペレーションシステムを開発できれば、現地でも実装することができる。そういうチャンスがあると考えている。
乗り物には、鉄道や航空機などの大幹線、バス、タクシー、自転車などのレイヤーがあるが、ライドシェアと呼ばれる相乗りサービスも生まれている。鉄道やバスを運行する西鉄にとっては、ライドシェアは強力なライバルになる。ライドシェアに対して、対抗するのではなく、これをうまく取り入れて、ビジネスチェンジする必要があると考えている。既存のビジネスモデルに固執したままだと、将来はないという危機感がある。
都会のバス会社でも田舎のバス会社でも、同じだ。既存のビジネスとどう組み合わせて、どういうポジションを取るかを考えなければならない時代がきている。乗り物ツールのどれ1つとして欠けることなく、全部入れてグランドデザインを描いていくことが、これからの交通ビジネスの姿になる。その意味で、「のるーと」は大きなエレメントになる可能性がある。
――自動運転は?
藤岡 当然、可能性としてはある。ただ、自動運転をめぐる日本の法制度を考えると、完全自動運転(レベル5)の車両が一般公道を走るにはまだまだ時間がかかる。技術的な問題に加え、法制度や責任所在の問題もネックだ。
田中 車両コストもハードルになる。仮に1台数千万円かかる場合、自動運転にするメリットはなんなのかという話になる。
バス事業は利益率が低いが逃げるわけにはいかない
――「西鉄=バス」のイメージが強い。
田中 西鉄は、運輸事業を核として、いろいろな事業を行っているが、やはり交通は、西鉄ブランドの源泉になる。交通に関して、確固とした基盤、ビジネスモデルをもっておく必要がある。そういうところから、未来モビリティ部が設置され、「のるーと」という乗り合いサービスが始まっている。我々の部では、自己モデルの点検、変革モデルの検討に取り組んでいる。
西鉄のなかでは、バス事業のウエイトは小さくなっている。利益率も低い。実態のあるリアルなサービスは難しくなっているが、そこから逃げるわけにはいかない。時代や環境に合わせて、モデルを少しずつ変えながら、地域の交通、人の移動を支える会社であり続けようと努力している。バス事業は、誰でもいつでも乗ることができる非常に優しいサービスだ。もっと大切にされて良いサービスであり、運転手の待遇ももっと改善されるべきだと考えている。
そのためには、「人を乗せて運ぶ」という今まで通りのバス事業を続けているだけではいけない。たとえば、バスは年中無休で定時定路線なので道路の痛み具合などがモニタリングできるほか、人の動きである乗客の乗り降りのデータはまちづくりに役立つ。こういったものに経済価値が付けば、バスの付加価値が上がる。バスのあるまちにはメリットがあって、運転手はそれを支える貴重な存在だということになれば、「バスの運転手になろう」という人も増えるかもしれない。
西鉄ではこれまで、「すべて西鉄で塗り替える」という競争意識をもってビジネスをしてきた。ただ、今はそういう時代ではない。これからは他社やお客さまと協調してやっていかなければいけない。西鉄全体として、モデルチェンジしてきている。そのなかで、トヨタ自動車(株)や(株)日立製作所など異業種とのアライアンスも増えている。
「のるーと」を世界に通用するモデルに
――「のるーと」をどう育てていきたいか。
田中 日本のオンデマンドバスの標準モデルに、そして全国各地で使ってもらえるサービスにしたい。最終的には、世界でも通用するモデルに育てたい。それぞれの地域にオペレーションパートナーがいれば、適宜カスタマイズを加えれば、世界のどこでも可能だと考えている。この手の話に国境はない。
藤岡 モデルを国内外に広げるためには、まずアイランドシティで成功しなければならない。成功とは、お客さまに安定的に使ってもらうことを意味する。お客さまを増やし、使い続けてもらうモデルに仕上げることが我々の第一歩になる。
(了)
【大石 恭正】<COMPANY INFORMATION>
代 表:田中 昭彦
所在地:福岡市博多区博多駅前3-4-25
設 立:2019年3月
資本金:1億5,000万円
URL:https://www.next-mobility.co.jp<記者プロフィール>
大石 恭正(おおいし・やすまさ)
立教大学法学部を卒業後、業界紙記者などを経て、フリーランス・ライターとして活動中。1974年高知県生まれ。
Email:duabmira54@gmail.com関連キーワード
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