スーパーマーケット 表の事情と裏の事情(7)~ディスカウントは顧客のデマンドを小さくする
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思い切って価格を安くするとお客の心理に変化が起こる。それは価格以外の期待が希薄になることだ。圧倒的な価格の安さはほかのサービスが不満でもそれを気にしなくなる。
だから売り手は徹底的に安く売ることに傾注できる。しかし、販売価格を安くすれば原価が下がらない限り粗利益率が低くなる。さらに安く売って販売数量が増えないと売上の低下につながる。だから安く売るには販売量の増加が不可欠だ。
小売業の経費のほとんどは固定費だといわれる。確かに家賃や人件費、光熱費や設備費は売上の多寡による変動は小さい。だから経営を健全に保つためには基本的に売上が大きなポイントになる。
その意味ではかつてダイエー創業者の中内功が言った「売上はすべてを癒す」という言葉はある意味で正しい。同じ経費なら売上が上がるほど経費率は下がる。
より安い価格で売るためには裏を返せば売り場面積あたりの売上をより多くしなければならないということである。
「安く売るのは簡単だ。それより知恵を使ってお客さまの支持を得ることを考えろ」。かつてGMSといわれる日本型大型店が売上不振に陥った時、多くの経営幹部が現場に向かってそう言った。
しかし、安く売るのは簡単ではない。値段を下げるのは簡単だが、問題はその結果だ。通常型のスーパーマーケットでは10%粗利率が下がるとその分の粗利額を補うためには売上が1.6倍以上必要になる。5%でも1.25倍だ。
小売業で売上の二ケタ増はたやすいことではない。安く売ることで思うような売上が手にできれば良いが、そうならない場合は大変なことになる。
販売現場ではそのリスクがまず頭に浮かぶ。だから販売不振に陥っても「知恵を使えとか経費を節減しろ」ということになる。
一見、この方法には妥当性がある。しかも使うのが知恵ならコストリスクがない。だが、この方法はたいていうまくいかない。売り場担当者は、もともとそれなりの知恵を使い、工夫をしながら売り場づくりと販売を行っているからだ。
さらに知恵を使うという漠然とした対策には数値的な基準そのものがない。加えて検証の方法もないから頑張っているけど思うような数値が・・・ということになる。それやこれやで安く売ることは容易ではない。だから安売りには勇気がいる。
【筑前 太郎】
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