【検証】「ゴーン国外脱出」~明白な陰謀の証拠(後)
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陰謀の本丸
前述の陰謀は外形に現れた隠しようのない陰謀で、言わば外堀みたいなものである。
ゴーンの主張する陰謀の本丸は2つの司法取引の闇の奥にある。陰謀者らはゴーンを貶めるための証拠の捏造をはかると同時に、その陰謀の痕跡を残さないように証拠隠滅もはからなければならない。この2つの効果を同時に持つ物が、本件事件の2つの司法取引である。
世間の人は本件では公表されるかぎり1つしか司法取引がないと思っている。検察がお家芸とする「闇の司法取引」を国民は知らないか忘れている。
闇の司法取引
闇の存在であるから、筆者には客観的な物証はない。しかし、論理的な証拠はある。それが西川取締役をめぐる不可思議な現象である。この現象が「闇の司法取引」と判断できる合理的な理由は以下の通りである。
(1)有価証券報告書に記載された役員報酬の具体的金額を決定する権限者3名のその一名が西川である。本件では残りの2名のゴーンとケリーが逮捕起訴された。
かつて役員報酬項目が重要事項虚偽記載で摘発(処分)されたことがないといわれる。
つまり、役員報酬事項はその決定手続過程から見て、重要事項虚偽記載の対象とはならない。
これは会社法の知識が必要であるから先に概略を説明する。
役員報酬はお手盛りを防ぐため、株主総会決定事項である。ただし、それは大枠としての総額であって、個々の役員の具体的金額の決定は取締役会に委任されている。日産では、具体的金額の決定をさらにゴーンとケリーと西川の3名の合議に委任している(有報記載)。
つまり、有報が総額規定の範囲内にあれば、具体的な個々の役員への支払い金額を記載しなくても、虚偽でもなければ隠蔽でもない。もちろん、ゴーンへの支給額は記載されていた。
これが、虚偽記載とされた。記載された金額と同じくらいの「闇報酬」が存在したとして検挙された。この「闇報酬」の主張こそ検察の無知ぶりをしめす暴論であり、さまざまな矛盾を内包するものであるが、西川の闇司法取引に関する事項だけについて問題を指摘すれば、西川はこの「闇報酬」の決定権者である。これを西川は議決書に「知らないでサインした」と弁明した。これを検察が認めたことが、検察と西川の間に「闇司法取引」が存在した証拠である。
検察でなくとも、こんな不条理な弁解を誰も認めない。検察はこんな馬鹿げた弁解を認めることなく、3名を起訴して、西川の弁解が成立するか否かは裁判官の判断に委ねるべきが、検察官の義務である。
表の司法取引
(2)日本の司法取引法は被告人の利益にならないどころか、かえって裁判を紛糾させる、世界に類をみない、検察官の検察官による検察官のための立法である。悪法の極みである。
アメリカにある司法取引法は、被告人が罪を認めて裁判の早期決着と処断刑の軽減化ができる制度であるから、被告人利益型の取引法である。
日本の司法取引法は、共犯者がほかの共犯者を裏切る行為であり、たしかに協力共犯者にはメリットはあるが、裏切られた共犯者には何のメリットもない。
問題は共犯者が虚偽の証言でほかの共犯者に罪を責任転嫁すること、そのために偽証を誘発しやすいことである。このため、必ず、裁判は紛糾する。とくに協力共犯者がほかに多くの犯罪を抱えているような人物である場合、そちらの罪を免除軽減する条件で、共犯でも何でもない人間が共犯者として司法取引の協力共犯者となる場合があることである(有名な例が美濃加茂市長事件)。
つまり、自称共犯者である。日本の司法取引法は最初から自称共犯者が登場する捜査手続としても違法捜査の様相を呈する捜査方法である。だから、不正を隠蔽するため検察は証拠開示に抵抗する。
本件ではゴーンとケリーの犯罪に西川は共犯者となり得る地位にあるが、報道されている2名の役員はそもそも共犯者となり得る地位にない。完全な自称共犯者である。罪名は有報重要事項虚偽記載罪であるから、最低でも取締役会に出席して、有報の作成権限があることが共犯としての条件となるが、2名は取締役会の構成員ではない。しかもどのような共犯行為かも明確にされていない。
報道によれば、将来のゴーンへの具体的金額が記載された報酬予定書面を毎年作成し、それを秘密裡に保管していたという。これを聞いて噴飯しない会計人はいないだろう。各期の株主総会承認額以外に報酬額が決定され、将来、それは多分、ゴーンが役員を退任したときに金庫から出され、日産から支払われるという筋書きの話となっている。検察官は漫画の読みすぎであろう。
役員報酬を決定するのは総額を株主総会で、具体額は取締役会で、そして、具体額を実際に決めるのは3名の金額決定受任者で、その具体的に決定された金額を最終的に取締役会が承認する、という手続構造となっているのが日産である。この手続に乗っていない金庫のなかの取締役会の知らない役員報酬など、法的には何の意味もない。
退任時に、もし出してきて、取締役会の最終承認を得たなら役員報酬となるが、もちろん、何も金銭的な支払もないのであるから、有報に記載しようがない。各期で虚偽表示があったと主張することが、妄想以外の何物でもないことは明白である。将来に支払われる役員報酬を承認した株主総会などこの世に存在しない。そんなものがあれば、株主総会が各期で役員報酬の総額を決める意味もなくなる。こんな馬鹿げた論理の上で、ゴーンらは起訴されたのである。
陰謀の運命
裁判所はこの陰謀に直面している。今後の裁判を、ケリーの裁判を含め、方向性を決めることが、すなわち、陰謀を認めるか、さらに裁判所まで陰謀に事後加担して、国民の目から遠ざけるかのわかれ道である。しかし、裁判所は日本国民の目を欺いても世界の良識の目を欺くことはできない。ゴーンは、図らずも、日本の司法改革者として後世の史家に評価されるかもしれない。ゴーン事件は今が法的な旬にある。
(了)
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