【中村医師追悼企画】活動する場所は違えども 先生のご遺志を継いでいきたい―(前)
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特定非営利活動法人ロシナンテス 理事長/医学博士 川原 尚行 氏
12月4日、アフガニスタンなどで人道支援事業を行っているペシャワール会の現地代表で医師の中村哲氏が、銃撃されて死亡したと報じられた。この悲報は国内外に大きな衝撃を与え、多くの人が悲しみに包まれた。スーダンなどで医療支援を展開する特定非営利活動法人ロシナンテスの理事長で、中村氏と同じ九州大学医学部の後輩でもある川原尚行氏もその1人だ。川原氏に、現在の心境などを聞いた。
尊敬する先輩であり目標「魂の一部をなくしたかのよう」
――中村先生の訃報を聞かれたときのご心境はいかがでしたか。
川原 私がスーダンに向かう途中の空港で聞いた第一報では、「中村先生が銃撃を受けたけれども、命には別状ない」とのことでしたので、もちろん心配はしていましたが、まずは「命が助かって良かった」と思っていました。ですが、残念ながらその後に先生が病院で息を引き取られたと報じられ、それを聞いたときは本当に、深い悲しみと喪失感を覚えました。まるで、自分の魂の一部をなくしてしまったかのようでした。
――以前からご親交があったそうですが、川原さまにとって中村先生は、どのような存在だったのでしょうか。
川原 中村先生とは地元も一緒ですし、大学の先輩でもあります。そして何より、中村先生はアフガニスタンで私はスーダンと、場所こそ違いますが、それぞれ海外で医療支援活動を行っています。スーダンはテロ支援国家に指定されたり、米同時多発テロの首謀者であるウサマ・ビンラディンが潜伏していた時期があったりと、アフガニスタンとスーダンは両国ともイスラム教がバックにあり、共通している部分も多くあります。中村先生はアフガニスタンの地で、現地の人たちのために本当に頑張られていました。心から尊敬しておりましたし、私が生きていくうえでの標(しるべ)のような存在でした。
私もスーダンでがむしゃらに活動してきましたが、ふと立ち止まって顔を上げると、そこには、はるか先を走っておられる中村先生のお姿があったように思います。常に目標といいますか、中村先生と同じ高みを目指していこうというような思いで、私なりの活動を行っております。
現地の人々が自立して医療を継続できる仕組みづくりを
――ロシナンテスでは現在、どのような活動を行っているのでしょうか。
川原 スーダン国内の医療施設のない地域を回って医療を提供するほか、診療所の建設や、給水所の整備、学校の建設を行うなど、現地の人々が自立して医療を継続できるような仕組みづくりのための包括的な事業を実施しています。
そのような医療支援活動を行っていくうえで、どうしても行き当たるのが、中村先生と同じく“水”の問題で、現地ではキレイな水の確保がとても困難です。井戸が掘れるのであれば、それが一番良いのですが、地下水がなくて井戸が掘れないような地域もあります。そういった場所では、「ハフィール(Hafir)」という雨水貯水用池を用いて飲料水を確保することが多いのですが、そこには動物も来るため、糞尿などが混入して不衛生な状態になっていることが多々あります。そこにフェンスを付けたり、現地にあるもので簡単なろ過装置をつくったりして、古いタイプのハフィールを新しいものにし、可能な限りキレイな状態の水を提供するという事業を行っていく予定です。
(つづく)
【坂田 憲治】<プロフィール>
川原 尚行(かわはら・なおゆき)
1965年9月、北九州市生まれ。小倉高校、九州大学医学部卒業などを経て、98年に外務省に入省。2002年に在スーダン日本大使館に一等書記官兼医務官として着任した。05年1月に外務省を辞職し、同年4月よりスーダン国内での医療活動を開始。06年5月、北九州市に「NPO法人ロシナンテス」を設立。同年8月にはスーダン共和国政府から国際NGOとして正式に登録される。以来、スーダンを中心に医療支援活動を展開している。関連記事
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