【コロナに負けない(7)】新型コロナウイルスが食品業界におよぼす影響~読者からの投稿(前)
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新型コロナウイルスは2019年12月に中国の湖北省武漢市で最初の症例が確認されて以降、中国全土へ急速に感染が拡大し、翌1月には隣接するアジア圏の国々にも感染が拡大した。WHOは2020年1月31日に「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」を宣言、3月11日にはついに「パンデミック相当」と表明した。3月27日現在、日本国内の感染者数は1,387名で、死亡者数は46名である(横浜港のクルーズ船関係を除く)。中国は2月中旬に感染者数のピークを迎えた後、減少傾向にあるが、3月に入ってからは欧米諸国の感染者数が急増しており、今後も世界的に予断を許さない状況が続いている。以下、現在の情勢を踏まえて国内食品業界への影響を要因別に見ていく。
供給
感染予防のため人出が激減して大打撃を受けているのが飲食系店舗で、売上の7割が飲食店の酒類問屋「カクヤス」では大手居酒屋チェーンの注文キャンセルが相次ぎ、「花見需要」も見込めず、2月以降の業務用需要は落ち込んだままである。
使い道のなくなった学校給食用の食材は行政の後押しもあって、メーカーの加工用に振り替えるなどの対応がとられたが、メーカー側は需要減もあって今後過剰在庫となる恐れもある。
消費者市場では、自治体からの外出自粛要請で不安心理が増長され、調理済食品や保存のきく食品類の買いだめ行動が見られて、冷凍食品・缶詰・レトルト食品・カップ麺・パスタなど、一時的に店頭の品切れが続出するほどのパニック状況が現出した。
調達
食品メーカーは中国にグループ企業や協力工場、製造委託先をもつところが多いが、一般に国内工場の原料や包装材料の輸入品在庫は2~3カ月分を確保しつつ稼働しているので、今のところまだ大きな在庫不足はきたしていないが、今後は原料・資材の手配やサプライチェーンに深刻な影響が出てくる可能性がある。
味の素ではすでに輸入原料の代替費用9億円、中国工場の操業停止で6億円の損失を見込んでいる。ただし燃料価格の下落で2.5億円の費用減というプラス要因もある。食品業界は加工用の野菜・水産品等は中国からの輸入割合が高く、各社とも材料費高騰、ほかルートの手配に追われているのが現状だ。
イベント延期・中止
工場見学を通年で行っている食品企業は多いが、2月下旬から各社ともほぼ見学中止としている。また展示会は感染対策として入場時の検温チェック、アルコール消毒、試食中止、マスク着用などに取り組んでいるが、出展自体のとりやめも増えている。会合・会議・宴会などのイベントが軒並み中止されて飲食の大口が激減し、この用途での市場の冷え込みは相当厳しくなっている。
感染対策・支援
食品業界ではもとより各社独自に衛生上の感染対策を行っているが、今改めて従業員に対して対策を徹底している。石鹸での手洗い、アルコール消毒、咳エチケット、通勤・勤務時のマスク着用、出勤時体調確認などである。製品陳列でも山崎製パンが展開する「ヴィ・ド・フランス」では、感染対策として店頭に陳列するパンにフードカバーを付けたり、個包装にする取り組みを開始。フレッシュベーカリー神戸屋などを展開する神戸屋もセルフ販売の店舗で、セロハンを陳列商品の上にかけるほか、一部店舗では個包装対応を行う。
会社全体としても可能な限り出張禁止、時差出勤、テレワークなどをすすめる企業が増えている。消費者向けの支援に乗り出す企業もあり、餃子の王将では、休校になった子どもに対し、税別250円の「お持ち帰り専用お子様弁当」を中学生以下対象に1人3食まで提供している。飲食系事業者では来店客が減少しているなかで、食生活に貢献すべく支援策を打ち出す事例が散見される。
企業活動への影響
人の往来がストップしてしまうことから輸出入にも影響が出ており、中国やその他の海外拠点が操業停止に追い込まれる事態が起きている。またインバウンドの減少は外食業界に深刻な影響をおよぼしている。中国の日本食レストランは今でも開店率は45%程度でツアーも中止、急速に経営が悪化している。しかし、現地従業員は語学を含めた特殊技能が必要なので簡単には解雇できず、新規雇用の予定も白紙状態。
東南アジア向け高級水産食材輸出商社の久世では、3月3日以降の注文がすべてキャンセルとなり、企業収益が30%減少している。
(つづく)
【辺見】
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