傾斜の事実を隠され販売されたマンション!(前)
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NetIBNewsでは、3月9日に「福岡市東区の傾斜マンション、構造計算にも問題あり!」、3月16日には「続・福岡市東区のマンション、構造計算問題」を報じ、構造設計を行ったAへのインタビューを掲載した。なお、この「A」とは NetIBNewsに何度か登場していただいた構造設計一級建築士の仲盛昭二氏である。
NetIBNewsを見たというこのマンション、「ベルヴィ香椎六番館」の区分所有者の1人から編集部に連絡があり、話をうかがった。話の内容は、2018年末にこのマンションを購入した際、仲介業者からマンションが抱える問題を知らされなかったというものである、
マンションが抱える問題を知らされないまま購入したBさん一家は3人の幼児を抱える5人家族。2018年10月、子育てしやすい環境を気に入った夫妻は、このマンションの購入を希望し、契約を結ぶこととなった。
仲介不動産会社はS社福岡支店(福岡市博多区)。S社は大手で歴史も古い不動産流通会社であり、Bさん夫妻にとってはS社のネームバリューは「大手で、しかも財閥系だから」という安心材料があった。
当初の契約日は買主であるBさんの希望で 仕事が休みの11月の週末に、「売主も同席の上で」と予定されていた。しかし、S社の担当者のRから「売主の気が変わらないうちに」と、10月中の契約を強く勧められ、急遽、平日である10月31日(水)の夜8時・香椎浜の喫茶店に手付金を持参し、契約することとなった。契約の際の説明では 経年劣化などの一般的な説明事項以外に特別な説明はなかったが、「総戸数286戸のうち1人だけが地震被害を訴えているようだが、購入される部屋には関係ありません」と噂話のような口調で説明があった。しかし、「調停が行われている」ということは伝えられなかった。この説明を聞いたBさん夫妻は「1戸だけに問題があり、建物自体に問題があるわけではない」と認識させられて売買契約を交わし、S社の担当者Rの指示に従い、手付金を現金で支払った。その際に署名した「お打合せ確認シート」には「売主の部屋自体は何ら影響もなく使用されている。建物に不具合が起きている箇所も知らない」との記載があった。
(実際には、S社のRは契約日前日に 調停が行われていることを書面により知っていた)後に、Bさんが S社から交付された「お客様との契約締結に関する基本方針」という資料を読んだところ、「原則として弊社事務所での売買契約締結をお願いしております」「弊社による手付金・決済金のお預かり・・・ すべてお振込みに限定させていただいております」という記載があった。「事務所ではなく喫茶店」「振込みではなく現金」と、S社の方針と真逆の対応や、管理費や修繕積立金が伝えられていた金額よりも高いなど 事前に聞いていたことと事実が違うことに戸惑いはあったものの、Bさん夫妻は、すでに手付金を支払っていることもあり購入に踏み切った。
引っ越しの際にも、S社から管理会社に引っ越し日が通知されておらず、荷物をトラックに積んだまま 運び入れることができなかった。管理人は「引っ越しどころか、この部屋を売却することすらS社から聞いていない」と答えたという。
何とか入居できたBさんは、4月には輪番制で管理組合理事となり、その総会の席で 調停が行われていることを初めて知ったという。Bさんは「購入前に知っていれば購入しなかったのに」と憤る。事実を隠して販売したS社と売主の罪は重い。Bさんは「マンションの不具合は 管理組合の議事録にも記載されているはずだし、調査が行われたことを管理会社が知らないはずはない」という。
S社担当者Rは、Bさんに「管理組合の議事録を閲覧したが、問題になる記述はなかった。管理会社からも マンションの施工上の問題に関する情報の提示はなかっ。」と説明しているが、Bさんが管理会社に確認したところ、「S社から管理会社に対して 議事録閲覧の申し入れはなかった」とのことであった。(つづく)
【桑野 健介】
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