2024年12月22日( 日 )

【コロナと対峙する企業】興和~アベノマスク狂騒曲に乗ったばかりにあれこれ詮索されるハメに(前)

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足下の業界団体の「南北朝時代」の抗争には完敗

 新型コロナウイルスの対応で、安倍晋三政権の泥縄式の対応を象徴するのが、466億円の予算を投じた「アベノマスク」こと、ガーゼ製の布マスク。官邸官僚の「国民の不安がぱっと消えます」という提案に安倍首相が乗ったというのが定説だが、その後の迷走もあって、「ぱっと消える」どころか、思い付きで動くリーダーシップのなさに不安が広がった。そのドタバタ劇のせいで、アベノマスクに協力した医薬品メーカーの興和(名古屋市)は、あれこれ詮索されるハメに…。

興和の受注額が54.8億円でトップ

 アベノマスクは出足から失速した。布マスクは介護施設や妊婦向けに2,000万枚、全所帯向けに1億3,000万枚を政府が調達。1世帯2枚ずつ配布する計画で、東京都内は4月17日から始めた。ところが、妊婦向けマスクの一部から黄ばみや黒ずみなどの汚れが見つかり、配達が中断した。1カ月以上たつが、配布は都内のみで、全体の4%にとどまる。政府が納入業者の選定や契約金額について説明を渋ったことが、「裏に利権がある」という疑念につながった。

 厚労省は4月21日、アベノマスクの製造元、興和、伊藤忠商事、マツオカコーポレーションの3社の社名と受注額を公表した。受注額は興和が54.8億円でトップ。伊藤忠が28.5億円、マツオカコーポレーションが7.6億円。合計90.9億円だった。製造工場は中国、ベトナム、ミャンマーにある。

 伊藤忠は誰でも知っている大企業。興和は胃腸薬の「キャベジンコーワ」、かゆみ止めの「ウナコーワ」など知名度が高い商品を世に送り出しているが、3次元マスクもつくっている。
 マツオカコーポレーション(広島県福山市)は、17年に東証一部に上場した日本最大手の縫製企業だ。売上の7割を「ユニクロ」を中心としたファーストリテイリング向けが占めており、ファーストリは大株主として名を連ねる。中国、バングラデシュ、ミャンマーにユニクロ向けの縫製工場をもつ。ユニクロの専属工場だ。

 厚労省は残りの会社を公表しなかった。4月27日になって、2社を公表した。「日本マスク」のブランドで知られる横井定(よこい・さだ、名古屋市)と、福島市のユービスオなる会社だ。

 福島のユービスオにメディアが殺到。ベトナム製木質ペレットを韓国などに卸しているブローカーだそうだが、看板もない。ただ、同社の社長が脱税で有罪判決を受け、執行猶予中だったことがわかった。これで、厚労省が社名を公表するのを渋ったのだろう。どうしてこういう会社に妊婦用マスクを依頼したのか、政府の一連の対応に不信感が広がった。「速やかにマスクを取得する必要があることで、随意契約を行った」と政府は説明した。

(つづく)

【森村 和男】

(中)

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