2024年12月23日( 月 )

コロナ禍で大量失業の“泥沼”にはまった世界経済(前)

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日韓ビジネスコンサルタント 劉 明鎬 氏

 今回のコロナウイルス感染拡大でわかるように、ウイルスによる感染症は感染スピードが速く、全世界に一気に感染が拡大することもある。感染症の拡大は多くの人を死亡させ、もっと深刻な場合、特定の集団や国家を崩壊させるほどの破壊力をもっている。

 目に見えない小さな存在でありながら、ウイルスが人々を混乱に陥れ、既存の制度を崩壊させ、新しい制度にとってかわるような結果を招くこともある。歴史を振り返ってみると、伝染病や感染症で、歴史の流れが変わった事例は多々ある。西洋の歴史において、中世の幕がおり、ルネッサンス時代が到来したのは、実はヨーロッパの人々の4分の1を死に追い込んだ、ベストによるものである。 アメリカ大陸の古代文明が消えてしまったのも、ヨーロッパ人がアメリカ大陸に持ち込んだウイルスのせいであることは、大多数の学者が認めている。このようにウイルスなどによって、歴史に一大変換がもたらされた例は、今回が初めてではない。コロナウイルスも世界の在り方に、劇的な変化をもたらすようになることは間違いない。

 今回は変化の初期段階の兆しでもある雇用関係を中心に、世界の労働市場に、どのような混乱が起きているのかを取り上げてみよう。

 世界各国に大量失業という“津波”が押し寄せてきている。コロナウイルスが発生したことで、都市は封鎖され、感染拡大を防ぐために相当数の企業が生産と営業を一時休業したことにより、大量失業やレイオフが発生している。

 国際労働機構(ILO)は、世界金融危機の時よりも、もっと多くの失業者が発生すると予測している。世界のコロナウイルスの患者数は、現在約540万人で、死亡者数は、約34万人にのぼる。一部の国では、規制緩和などの動きもあるが、コロナウイルスは、いつ終息するか、めどが立っていない。ワクチンが開発できるまで、このまま続く可能性すらある。
 コロナ禍の外出自粛などで、来店客が減少している飲食業、小売業などを中心に、業績に影響が出始め、危機の連鎖が拡大している。

 コロナウイルスで最初に打撃を受けた業種はといえば、航空会社、ホテル、旅館、飲食業、映画館など、人の移動や集まりなどに影響を受けやすい業種である。国際線の運航が中断されている現在、観光業において、売上の減少は深刻である。米国では、ホテル、航空、旅行業などの企業を中心に、数百、数千名ずつ、社員を解雇している。ヨーロッパでも、ノルウェー・エアシャトルなどが社員の90%に当たる7,300名を一時解雇するなど、大量解雇の嵐が吹き荒れている。

 米労働省が発表した失業保険の新規申請件数(季節調整済み)は、5月に入って、1週間で244万件となり、3月と比べると、やや減速した。ただ、コロナウイルス発生後の合計申請数は、9週間で3,860万件を突破。このままコロナウイルスが続けば、5月の失業率は20%に達する可能性もあるという。

(つづく)

(後)

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