ストラテジーブレティン(256号)~日本を蘇生に導くハイテク大ブーム~米中対決のカギを握る半導体、言わば現代の石油(3)
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NetIB‐Newsでは、(株)武者リサーチの「ストラテジーブレティン」を掲載している。今回は2020年7月13日付の記事を紹介。
(3) 守勢に回る米国、長期戦にシフト
香港は当面安定化
米国の対中制裁は及び腰、の感が免れない。香港自治侵害に関わった個人と組織を制裁する「香港自治法」が上下両院満場一致で可決された。それなのにトランプ大統領はいまだ署名していない。香港の金融情勢は安定しており、米国による制裁実施が直ちに効果を表す状況ではないからかもしれない。香港ドルは当面盤石といえる。シンガポールにおける海外預金の増加が報道されるなど、香港からの預金流出も観測されている。
しかし、香港の外貨準備高は4,400億ドルと、マネタリーベースの2倍に達しており、資金流出には十分に耐えられる状況である。万一の場合、中国人民銀行の香港へのドル送金が行われよう。むしろアリババの香港上場など香港金融にテコ入れする姿勢が強まっている。GBA(Greater Bay Area)プランの下、製造業拠点の大陸深圳と一体化していくという、中国側からの香港発展のプランも打ち出されるだろう。
米国は守勢に回っている。対中輸出は大きく減少。中国は南シナ海に加えて東シナ海、黄海でも同時に軍事演習を実施、それに対抗して米国も南シナ海で米空母の二隻による軍事演習を実施したが、中国の攻勢を押し返せてはいない。米国国内の人種問題などの国論対立、トランプ大統領の指導力欠如、大統領選挙など政治空白もある。
伝家の宝刀、金融制裁は時期尚早
米国に今すぐにできることは少ない。中国に金融的制裁を科すべき時期に至っていないとすれば、ハイテク覇権を守り中国を振り切る土台をつくることが今は大事である。昨年末、後述するファーウェイ制裁の決め手として、ファーウェイをSDNリスト(事実上の敵性認定リスト)に加え、米国金融システムからの排除と在米資産凍結(=ドル使用禁止)を可能にすることが検討されたが、それは最終手段で時期尚早と判断された、と伝えられた(2019年12月4日ロイター)。
長期戦にシフトする米国➡ハイテク、半導体が天王山
短期的に攻勢を強める中国には2つのアキレス腱がある。半導体と金融である。このネックを中国はコロナパンデミックによって与えられた時間を最大限に利用することで、クリアーしようとしている。マクロ面では投資主導の国内成長維持、金融面では経常収支の大幅化改善と人為的資産価格押上げ、で困難の顕在化は相当期間の間(少なくとも3年以上)は先送りできるだろう。ハイテク面ではむしろ中国に勢いがある。
(つづく)
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